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- 【3月米FOMC】金融政策は予想通り、利上げ時期示唆?にサプライズ
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【要旨】
金融政策の概要
米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が3月18-19日(現地時間)に開催され、資産購入ペースの縮小(100億ドル/月の減額)が決定された。資産購入額の縮小は事前の市場予想の通りだったと言える。また、声明文におけるフォワードガイダンスに関して、失業率の目安として設けていた6.5%の基準を削除している。同時に、失業率基準の削除がFOMCの政策意図の変更を意味していないということも明記された。
サプライズとして記者会見では利上げの時期に関して具体的数値を述べた。テーパリング終了から利上げまでの期間を6カ月程度と例示し、これにより、2015年春の利上げも視野に入ることになった。しかし、これはイエレン議長の真意ではなく、実際に2015年前半に利上げに踏み切ることは難しいと考える(声明や記者会見の詳細はPDFを参照)。
金融政策の評価
今回のFOMCにおける決定内容は、ほぼ事前予想の通りだった。
前回と同様、資産買入策での月間購入額が100億ドル削減され(テーパリングの継続)、フォワードガイダンスは失業率目標が削除される形で修正された。フォワードガイダンスに関しては数値基準(量的基準)が削除されるのか、維持されるのか意見が分かれていたが、結果は、単純に数値基準が撤廃されるというものだった。前回までの声明文に記載されていた「(ゼロ金利政策は)少なくとも失業率が6.5%以上で、1-2年先のインフレ率見通しが長期目標である2%を0.5%ポイント以上超過しない限り適切である」という文章が削除されており、同時に失業率基準とともに記載されていたインフレ率の2.5%という基準も撤廃されている。
また、フォワードガイダンスでは失業率に変わる新しい指標を明示することもなかった。新しい質的基準を設けることもしていない。「雇用の最大化と2%のインフレ率」という2大使命(いわゆるデュアルマンデート)を強調し、その他には、「雇用情勢、インフレ圧力、期待インフレ、金融情勢など幅広い情報も勘案する」として、前回までの表現を踏襲するにとどまっている。
こうした修正の結果、金融政策のコミットメント効果は弱まったと見ているが、FOMCにとっては金融政策を柔軟に変更しやすくなったと言える。
さらに、声明の終盤には失業率基準の撤廃がFOMCの政策意図の変更を意味しないことも記載されており、失業率基準の撤廃で市場が過度に反応することを避けようとしたことがうかがえる。
今回のFOMCでは声明発表後にイエレン議長による記者会見が設定されていた。なかでも記者会見での利上げ時期への言及はサプライズだった。資産購入策(量的緩和策)が終了してからゼロ金利政策を続ける「相当な期間」は「6カ月程度」として具体的な数値を挙げている。現在、資産購入策の終了時期のコンセンサスでは今秋であり、その6カ月後に利上げが開始されるとすれば、その時期は2015年の春ごろということになる。
これまで、利上げ開始時期は2015年の後半という見方が優勢だっただけに、イエレン議長が、今年秋口の量的緩和縮小の終了を想定しつつ、その6カ月後に利上げをする可能性があるという意図でこの発言をしたのであれば、タカ派姿勢を示したことになり、確かにサプライズと言える。
しかし、これはイエレン議長の真意ではないと考えている。イエレン議長はその後に、インフレ率を重視すること、特に2%を下回るインフレ率ならば、ゼロ金利政策を維持する理由になるとも述べている。現時点で、低めのインフレ率が続くと見られることを踏まえれば、実際に2015年の前半に利上げに踏み切ることは難しいだろう。今回の発言だけで、2015年の後半に利上げとの見方を変えることは早計と考えている。
ただし、市場に2015年春にも利上げがありうるとの見方を浮上させたのは事実である。そのため今後、イエレン議長をはじめ、FOMC参加者が利上げ時期に関してどのような発言するのかには注目が集まるだろう。
(2014年03月20日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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