コラム
2014年03月03日

自転車活用した都市交通体系の再編-東京五輪2020の都市像(その1)

土堤内 昭雄

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先日、ロシアのソチで開催されていた第22回冬季オリンピックが、多くの人々にすばらしい感動を残して閉幕した。今後、東京では6年後の東京オリンピック・パラリンピックに向けた準備が本格化するだろう。東京都の新しい知事に就任した舛添要一さんの公式ホームページには、『オリンピック・パラリンピックで東京の魅力を世界に発信!!』と書かれている。就任後の会見では、史上最高の大会にするため、東京の交通体系の抜本的見直しも最重要課題のひとつであると述べている。

今世紀に入り、世界の大都市で自転車の活用が進んでいる。最も有名なのがロンドンだ。2012年のオリンピックを契機に、都心の交通渋滞緩和のため、自転車レーンやシェアサイクルステーションを整備した。東京でも都心に不要不急の車をできるだけ入れないという観点から、自転車の活用を推進するという。自転車の活用は環境保全、災害時の対応、生活習慣病の予防などのメリットが期待され、2020年までに自転車レーンを都心部を中心に120キロに伸ばす計画が検討されている。

これまで国内では道路上の自転車の位置づけがあいまいだった。軽車両として原則車道を走ることになっているものの、歩道を走る自転車も多く、歩道上の事故が多発している。最近では、歩道上の人身事故により高額の賠償金を自転車側に請求されることもしばしば起こっている。逆に、車道上の走行では安全性が十分確保されているとは言い難い。そこで自転車走行を歩道から分離する一方で、車道の路面に塗装を施して自転車レーンであることを明示し、安全性を向上させようというのだ。

自転車活用を促進するためには、自転車レーンをネットワーク化し、小規模な駐輪場を細かく配置し、都心全域をカバーするシェアサイクルシステムを構築することが必要だ。そしてハードの整備とともに道路交通法を見直し、自転車運転のルールを改善し、その安全性を高めることだ。ロンドンでは都心渋滞税の導入、自転車運転の技術向上と安全教育の徹底など、総合的な施策を実施している。

東京都江東区の臨海部では、自転車シェアシステム『コミュニティサイクル』*の実証実験が行われているが、これまで自転車活用がCO2の排出削減という環境的視点が中心で、交通モードのひとつとして大都市の交通体系に位置づけられてこなかったことも普及を妨げる要因となっている。私は、自転車活用を推進することは、これまでのクルマのあり方や歩行者との関係を抜本的に見直すことであり、超高齢社会を迎えた日本の都市交通体系の再編に向けて喫緊に取り組むべき課題だと考える。その対応は、6年後に日本が高齢先進国として世界に向けて情報発信する絶好の機会でもあるのだ。




 
* 東京都江東区臨海部「コミュニティサイクル」ホームページ<http://kcc.docomo-cycle.jp/
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(2014年03月03日「研究員の眼」)

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