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(グローバル化の進展)
グローバル化の進展が言われて久しい。
普段の生活を振り返っても衣服や食事・家電など、世界各地から輸入してきたモノを使っているし、逆に日本から輸出しているモノも多い。インターネットが普及したことにより、自宅に居ながらにして、海外のウェブサイトを簡単に閲覧できる。
先進国の欧米だけでなく、最近はアジアをはじめとした新興国との関係が深まっている。例えば、新興国に進出して生産活動を行う、あるいは現地向けの商品を販売する企業は急増している(図表1)。個人単位で見ても、日本人の海外旅行、あるいは外国人の日本観光などで、アジア新興国の存在感は増している(図表2)。
(日本で把握できる海外)
一方で筆者は、新興国経済の調査・分析をするなかで、日本語で得られる海外の情報はかなり少ないのではないだろうか、とも感じている。
そこで、今回は、どの程度、日本語で海外の情報に触れることができるかを簡単に調べてみた1。
一般的な情報発信媒体としては新聞やテレビが真っ先に頭に浮かぶが、今回は、記事数の多さや取得の容易さなどを踏まえ、インターネットから取得できる情報を対象にした。具体的には、ヤフー株式会社がインターネット上で配信している「Yahoo!ニュース」のほか、経済情報を多く配信している情報源として「日経新聞(電子版速報)」「ロイター(日本語電子版)」「ウォールストリートジャーナル(日本語電子版)」(以下、それぞれYahoo!、日経、ロイター、WSJと省略)を調べている2。
結果を見ると、取得できたニュース総数では、Yahoo!が最も多く、1日あたり多い日で2000件超、少ない日でも1000件ほどあった(図表3)。祝日や休日は配信ニュースが少ない傾向にあるようだが、供給量としては非常に多い。
このYahoo!から取得したニュースのうち、海外に関するニュース(記事中に海外の国名が含まれているニュース)の割合を調べたところ、米国・中国・韓国のニュースが他の国と比較して突出しているという、特徴的な結果が得られた(図表4)。ニュース全体に対する割合で言えば、米国や中国・韓国のニュースは6~8%強、その他の国・地域は、概ね3%未満であった。
読者の関心のあるニュースが配信されやすいとすれば、日本では、米国・中国・韓国には高い関心を払っているものの、他の国、例えばASEANなどの国々への関心は薄いと言えそうである。
一方、日経やロイター、WSJなど経済関係の情報を中心に配信しているメディアを見ると、配信記事の総数はYahoo!ほど多くないが(前掲図表3)、海外関係の記事の割合は、韓国を除きYahoo!より高い傾向にある(図表5)3。
また、ロイターやWSJなど外資系資本のメディアは米国に関するニュースの割合が多く、中国や韓国も大きく上回るが、アジアのニュースも合計すれば、米国のニュース量に匹敵する規模で配信されている。
(海外が一様に身近になったわけではない)
アメリカ人に対して、ハンバーガーやピザが好きな人が多そうだ、自分の意見をハッキリ主張しそうだなど、思い込みや先入観を持っている人は多いだろう。事実と異なっているかもしれないが、普段、耳にするニュースから、こうした印象を抱いても不思議ではないと思う。また、アメリカ人歌手やスポーツ選手など有名人を挙げられる人も多いに違いない。ニューヨークやラスベガスなど土地ならではの話題を知っている人もいるだろう。
では、インドネシア人に対して、普段、どんな生活をしているか想像できるだろうか。思い込みや先入観を抱くほどの情報が入ってこない人も多いのではないだろうか。同様に、マレーシア人と出会って、話題に挙げられるテーマはあるだろうか。台湾人はどうか。韓国人や中国人ならどうだろうか。
今年7月から、ASEAN主要国に対する訪日ビザの発給要件が緩和された。ASEANからの観光客はますます増えるだろう。ビジネスにおいても、すでに日本とASEANの間でEPA(経済連携協定)が発効しており、今後は、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)など、一部の国とはさらなる貿易の自由化を進める姿勢を見せている。
海外との経済的な結びつきは強くなっている。ASEANはその代表とも言えるだろう。しかし、こうした経済関係の強さと人々の海外への関心との間には、まだ少し温度差があるようにも感じるのである。
(2013年11月20日「研究員の眼」)
03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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