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1.米国政府機関の閉鎖
米国議会の財政協議がまとまり、政府債務上限引き上げと暫定予算を巡る対立で、閉鎖が続いていた米国政府機関がようやく再開された。
閉鎖中の10月4日には、毎月第一金曜日に発表される雇用統計が発表されず、金融市場では交通信号が消えたようなありさまだった。新しい統計が発表できなくなっただけではなく、政府機関のホームページなども利用できなくなり、過去のデータを入手することもできなくなった。昔は紙に印刷された統計書を使っていたので不便ではあったが、こんな問題は起こらなかった。ITの発達で便利になったと喜んでいたが、思わぬところに落とし穴があった。
政府機関の閉鎖による直接、間接的な経済への影響が懸念されるだけでなく、FRBの行う金融政策にも影響が出るだろう。財政の混乱による景気悪化を懸念すると、FRBはなかなかQE3(量的緩和第三弾)の縮小に動けない。緩和から転換するタイミングが遅くなってしまい、将来金融市場の混乱を招く原因になることも懸念される。
2.米議会のねじれ
さて、米国議会では上院は民主党が52議席に対して、共和党は46議席で(民主党系無所属が2議席)民主党が多数だ。一方、下院は民主党が200議席に対して、共和党が231議席と(欠員4)、共和党が多数である。
上院の議席は各州に2議席ずつ割り振られているのに対して、下院の議席数は人口に比例して各州に割り振られている。また、下院は毎回全議席が改選されるのに対して、上院は選挙ごとに3分の一が改選される。こうした違いが議会のねじれを生んだのだろうと思っていたが、どうももう少し話は複雑なようだ。
2012年の選挙では、下院議員の選挙で民主党の得票率は48.4%、共和党は47.1%だった。得票率が民主党を下回っているにも関わらず、共和党は234議席を獲得し、民主党は201議席に留まった。
下院選挙と同時に行われた大統領選挙の得票率でも、民主党のオバマ大統領が50.9%だったのに対して共和党のロムニー候補は47.0%だったし、上院議員の選挙結果を見ても、下院で共和党の議席数が30以上も民主党を上回っているというのは不思議である。
3.米国のプレゼンス低下
今回の政府機関の閉鎖問題では、ティーパーティーと呼ばれる共和党の強硬派のやり方に対して批判が強く、共和党の支持率が低下した。しかし、2014年11月に予定されている中間選挙で、民主党が勝利してねじれが解消するのは難しそうだ。
人口比例になっているはずの下院で、得票率が低いにも関わらず共和党の議席数が大幅に民主党を上回っている理由は、選挙区割りに原因があるとされている。民主党議員は圧勝して選出されるのに対して、共和党は微差で勝利するように区割りができており、効率良く議席が獲得できると言われている。もしもこれが本当だとすれば、2020年に国勢調査が行われるまで選挙区割りの変更は行われないので、議会のねじれは当分続く可能性が高い。ようやくリーマン・ショックによる落ち込みを脱しようとしている米国経済だが、今度は政治的な混乱が障害となっている。
財政問題の解決にあたるため、オバマ大統領は10月初めのアジア歴訪を取りやめ、APEC首脳会議も欠席した。欧州系の格付け会社であるフィッチは、米国債の格付けを引き下げる方向で見直すと発表している。議会の対立は、米国の外交面におけるプレゼンスを低下させ、ドルの信認に傷をつけた。混乱が続けば、米国の外交・経済における相対的な地位低下を加速させてしまう恐れが大きい。
(2013年10月23日「エコノミストの眼」)
櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)
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櫨(はじ) 浩一のレポート
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