2013年10月21日

ドル高エネルギーが不足 ~マーケット・カルテ11月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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10月16日、世界を緊迫化させた米財政協議が合意に至った。米政府機関の閉鎖は来年1月半ばまで解除され、債務上限は2月上旬まで実質的に引き上げられた。結果、米国債がデフォルトに陥るという最悪のシナリオは一旦回避された。しかし、今回の合意は問題の先送りに過ぎず、市場では今後も同様の事態に陥る懸念が払拭されないだろう。また、量的緩和縮小の機会をうかがうFRBにとっても下振れリスクが存続することになったうえ、政府機関閉鎖の影響を見極めるには時間を要するため、縮小が遠のいたという市場の観測が強まっている。

従って、今後3ヵ月を見通した場合、本格的なリスクオンにはなりにくく、米金利は上昇しづらいため、ドルの上値は重そうだ。米景気回復期待が続くことで、現状よりは多少円安ドル高になるものの、年初来高値の103円台に達するほどのドル高エネルギーは見込みがたい。

ユーロの対ドルレートは米緩和縮小の先送り観測などから反発しているが、ドル売りの受け皿となっている側面が強い。ユーロ圏の状況に対して過大評価されている印象が強い。ECBが追加緩和に含みを持たせていることもあり、ユーロドルはいずれ調整を迎えるだろう。ユーロ円では3ヵ月後も現状比で横ばい程度と見ている。

本邦長期金利は0.6%台で低迷しているが、この水準では債券価格の高値警戒感も強く、持続性には疑念がある。国内の景気回復期待も根強いため、3ヵ月後には現状比でやや上昇していると予想する。

(執筆時点:2013/10/21)

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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