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1.好きな武将のランキング
日本人が好きな武将のランキングを見ると、織田信長、真田幸村、源義経などといった顔ぶれが上位に並ぶ。信長と言えば、誰でもまず、わずか2~3000の手勢、3万とも4万とも言われる今川義元を奇襲して撃破した桶狭間の戦いを思い出すだろう。
かく言う筆者も、上杉1万3000と武田2万が相対した第四次川中島合戦で、キツツキ戦法で挟み撃ちを狙った武田信玄の裏をかいて、信玄の本陣にまで攻め込んだ上杉謙信の方が好きだ。柔よく剛を制すとか判官びいきという言葉があるように、不利そうな方の味方をしたくなるということもその原因だろう。さらには圧倒的に劣勢な状況を、敵を上回る知恵と果断な決断で逆転する、乾坤一擲、胸の空くような思いが、人気の秘密ではないか。我々日本人には、どうも一発逆転を狙いたくなる傾向があるようだ。
2.悲観的になり過ぎか?
5月末に東京で開催された国際コンファレンスでは、ノーベル賞経済学者であるスティグリッツ教授(コロンビア大学)がアベノミクスは正しいと発言したなど、内外の経済学者がアベノミクスを評価した報道がされている。しかし、会議で最も興味深かったのは、コロンビア大学のサックス教授が、日本経済の現状は一般的な定義ではどう考えても危機には該当しないと発言したり、スティグリッツ教授も日本は欧米に比べて失業率も低いなどと指摘したりしていたことだ。スティグリッツ、サックス、クーパーの三人の教授が、そろって指摘していたことは、日本は単純に経済成長率を高めることだけを追い求めない方が良いということだった。
失われた20年とも言われる経済成長率の長期低迷の中で、日本経済の先行きに危機感を抱いている我々と、第三者として日本経済を見る立場の人たちとの認識の差に驚かされた。欧米経済は我々が思っている以上に深刻な問題を抱えていて、困難な状況にあるのは日本だけではないことも確かだ。日本経済の状況に危機感を持つことは重要だが、悲観的になり過ぎているという側面は否定できない。
3.特効薬はあるのか
これまで歴代内閣が次々と成長戦略を打ち出してきたが、そのいずれもが日本経済再生の決定打にはならなかった。アベノミクスの第三の矢となる成長戦略も、米国が金融緩和を縮小しようという動きに翻弄されて、早くも第四の矢を求める声も出ている。
日本経済は長年停滞が続き、じわじわと衰退して時間が経てばそれだけ症状が悪化していくのは明らかで、極めて危険な状況であることは間違いない。危機的状況なのだから、ここは一か八か起死回生策に賭けてみるしかないということになりがちなのだが、タイプの違う危機には対応策も変わってくるはずだ。
日本経済がおかれている状況は、リーマンショックによる金融危機や欧州の債務危機のような、急激な状況の悪化という症状の典型的な危機とは全く異なる。出血を止めるために、緊急手術が必要だという大ケガとは訳が違う。日本経済が陥っている危機とは、慢性の病気のようなもので、急速に進行はしないが放置しておけば取り返しのつかない状態になるというようなものだろう。
これまでの治療が劇的な症状の改善をもたらしていないのは確かだが、途中で治療をやめてしまったり、飲めばたちまち治るというような特効薬を求めて右往左往したりするのでは治療はおぼつかない。結局、根気強く地道な治療を続ける方が改善への道は近いのではないだろうか。
(2013年06月26日「エコノミストの眼」)
櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)
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