2013年04月05日

改正高年齢者雇用安定法の施行と若年失業

櫨(はじ) 浩一

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1.改正高年齢者雇用安定法の施行

高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)が改正され、4月から施行される。これまでは、事業主が高年齢者雇用確保措置として継続雇用制度を導入する場合に、労使協定で基準を定めて対象者を限定することができたが、今後は原則として希望者全員を対象とするものにしなければならなくなる。

1986年に制定されたこの法律が、60歳以上の高年齢者の就業を促進するために大きな役割を果たしてきたことは間違いない。60歳から64歳までの就業率は、2001年には50.7%にまで低下して全年齢平均をかなり下回っていたが、2012年には57.7%にまで上昇して、全年齢の平均とほぼ同じ水準となっている。
就業率の推移

2.高まる若年の失業率

このように高年齢者の就業が進んだ一方で、その副作用も見える。20代前半と60代前半の失業率は、長年にわたって全体の失業率に比べてかなり高く、ほぼ同じ程度で推移してきた。しかし、2000年頃からこの二つはかい離が大きくなり、60代前半の失業率は大きく低下して、ほぼ全体と同じ水準に低下した一方で、20代前半の失業率は全体に比べて大幅に高い水準にとどまっている。
年齢別失業率の推移
かい離が始まった時期から考えて、高年齢者の雇用促進政策が影響していることは明らかだろう。

3.従来方式の延長は限界に

2001年から厚生年金の定額部分の支給開始年齢が段階的に引き上げられ、報酬比例部分の支給開始も2025年には65 歳になる。高年齢者の雇用促進は、厚生年金の支給開始年齢を引き上げて年金保険料の引き上げ幅を抑制するために、定年年齢との隙間を企業に雇用を義務付けることによって埋めようとしたものだ。

つまり、現役世代の負担を軽減しようという意図であったのたが、残念ながら現実には高年齢者が若者の職を奪うという形で現役世代の負担となってしまっている。若年層の失業は、オンザジョブトレーニングで職業能力を高めていく機会を失うことも意味している。現時点で仕事と収入を失うということだけではなく、この間の失業によって職業能力が高まらないため、将来も所得水準が低下する恐れが大きい。

若年失業率の上昇は、これまでのように定年年齢の引き上げや継続雇用という形で、高年齢者が同じ職場で働き続けるという考え方に限界が来ていることを示している。年金財政の安定化のために支給開始年齢を65歳からさらに引き上げることも議論されているが、そのためには雇用の在り方を大きく変える必要があるだろう。

(2013年04月05日「基礎研マンスリー」)

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櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)

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