コラム
2013年02月27日

就職人気ランキングで考えるグローバル化時代の若年層の安定志向

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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今朝、日本経済新聞社で就職人気ランキングが発表された。弊社親会社の高評価は大変喜ばしいことだ。ただ、驚いたのは、これだけグローバル化の必要性が言われる中で、上位に外資系企業があがらないことだ。もちろん上位にあがった日系企業は積極的に海外戦略を展開し成功をおさめているところも多い。しかし、学生が各社を選んだ理由をみると「規模が大きい」「安定している」「一流である」などが並び、海外展開は直接的な理由にはないようだ。

若年層の安定志向は企業選びだけでなく、その後の働き方にもあらわれている。日本生産性本部「2012年度新入社員春の意識調査」によると、転職についての考え方を問う設問で「今の会社に一生勤めようと思っている」と回答する割合は年々増加している(図1)。2000年では20.5%だが、リーマンショック後の2009年には半数を超え、2012年では60.1%にのぼる。


転職についての考え方の推移


このような若年層の安定志向は「若年層の保守化」などと上の世代から批判されることが多い。しかし、不況下で育ち、社会保障不安も強く、アベノミクスでやや期待感は出てきたものの依然として将来に対する明るい見通しを持ちにくい中では、保守的な志向を持つことは自然な流れだろう。

また、若年層が日系企業を好む理由として、若年層の海外離れの影響もあるだろう。若年層では海外留学や海外旅行が減っていることがさまざまなところで話題になっている。これも上の世代から「内向き志向」と批判されることが多い。若年層が内向き志向となる理由は経済的な問題もあるだろうし、現在の日本の中でそれなりに満足した生活を送れることもあるだろう。また、ひと昔前と比べて海外へ行くことに特別な印象もなくなり、日々、海外での物騒な事件も報道される中では、わざわざお金をかけて安全な日本から出るメリットを感じにくいのかもしれない。

若年層の安定志向や内向き志向は自然な流れもあるだろう。また、そもそも現在の経済環境下で企業が安定した経営を維持できることは素晴らしいことだ。とはいえ、上の世代は若者たちの志向には物足りなさを感じ、チャレンジ精神やグローバル精神も求めるかもしれない。しかし、若者たちの価値観や志向は上の世代が牽引してきた社会環境の影響が大きい。若年層にチャレンジ精神やグローバル精神を求めるのであれば、社会を牽引してきた世代自身も変わる必要があるのではないだろうか。

私は現在30代半ばであり若年層でもなく、これまでの日本社会を牽引してきた世代でもない。同世代で活躍者も多いが、私自身は人にチャレンジ精神やグローバル精神をなどと大それたことを言える立場ではない。ただ、今、自分にできることとして、まずは現在の就労環境に感謝し、ささやかだが新年度に向けては苦手な英語を強化することと、私にとってはチャレンジングな英語での講演依頼も受けることを決意した。



 
 1 日本経済新聞, 第二部「日経就職Navi2013年 新卒広告特集~生損保など金融 上位に」(2013/2/27)

(2013年02月27日「研究員の眼」)

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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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