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筆者はかれこれ30代も後半なのだが、2~3ヵ月に一度、必ず朝一番に漫画を買う。それは「ONE PIECE」(尾田栄一郎氏作、以下「ワンピース」と表記)が発売される日だ。勤務時間中に読むことはあり得ないので帰り道に買ってもなんら変わりはないのだが、心がはやるのだ。誰かに漫画を薦めるとしたら、筆者は迷うことなくこの本を薦める。実際歴史的な人気作で、シリーズ最新66巻までの累計発行部数は2億冊を優に超える。
ワンピースを一言で説明すると、架空の世界で特殊能力を持つ少年ルフィが海賊王を目指して仲間と共に大冒険をする物語である。この物語には、「夢」、「努力」、「それぞれの正義」、「自己犠牲の精神」など様々なメッセージが詰まっているが、最も強調されるのは「仲間との絆」である。船長のルフィは決して海賊団の仲間を見捨てないし、仲間との間に一切の損得勘定はない。そのようなルフィの人間性に惹かれ、仲間はどんどん増えていく。とにかく熱い話だ。
さて、話はころりと変わるが、現実社会ではギリシャのユーロ圏離脱観測が高まっている。ユーロ圏、すなわち欧州統合の歴史を振り返ってみると、いくつかワンピースとの共通点が存在する。一つは高い理念・目標だ。第2次世界大戦を経て、欧州で二度と悲惨な戦争を起こさないという思い、すなわち「欧州の平和と安定」が欧州統合の根底にある。この趣旨に賛同する形で仲間も徐々に増えてきた。1999年発足時のユーロ圏は11カ国に過ぎなかったが、その後ギリシャなどを加え、現在は17カ国にまで拡大している(EU域外の導入国を除く)。
有史以来、ローマ帝国やドイツ帝国など欧州の広域が統合されたことはたびたびあったが、それらの事例は一つの強国が周りの国々を力で制圧した結果にすぎない。その意味で話し合いによる経済統合を目指したユーロ圏の試みは、ワンピース同様「未知の世界への大冒険」と言える。
しかし、両者が共通しているのはここまでだ。今のユーロ圏を見ていると、とても仲間の絆があるとは思えない。ギリシャでは救済と引き換えに結んだ緊縮財政の約束を反故にするという主張がまかり通り、ドイツは救済による負担拡大を危惧してばかりで、約束を守れないなら離脱もやむなしという匂いがプンプンする。もちろん国際政治の世界が奇麗事では済まないことは重々承知しているが、彼らは同じ共同体のメンバーのはず。「損失の押し付け合い」という国益の果てしないぶつかりあいを見るにつけ、欧州統合とはいったい何なのかと疑問に思う。各国がこのようなスタンスを続ける限り、たとえ今回の難局を乗り切ったとしても、いずれ危機がぶり返しかねない。
ユーロ圏の人々にも一度ワンピースを読んでみることをお薦めしたい。もちろんこれだけの人気作ゆえ、英語版も出ている。

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