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- 金貨に込めた726億円の善意
4月5日に財務省より、4月発行(3月募集)の個人向け復興国債・復興応援国債の応募額が発表された。個人向け復興国債は3種類の発行で変動金利10年物が1,680億円、固定金利5年物が973億円、固定金利3年物が469億円の応募額となった。また、個人向け復興応援国債は726億円の応募額となった。発行年月別に見ると、ボーナス資金などが流入したと思われる今年1月の7,454億円には及ばないものの、合計3,848億円、前年同月比1.6倍の応募額となった。
今回は「復興応援国債」の初回の発行であることから筆者は注目をしていたが、復興応援国債の726億円との応募額には、驚きと善意の篤さを感じた。
復興応援国債の仕組みを簡単に紹介するとi、満期が10年の変動金利債で、金利水準は当初の3年間は毎年0.05%、4年目以降は基準金利×0.66ii となっている。また、これに加えて、発行から3年目の利払日の保有残高に応じて、新たに発行される「東日本大震災復興事業記念貨幣」を残高1000万円毎に1万円金貨1枚、残高100万円毎に1千円銀貨1枚もらうことが出来る。我が家には小学生の娘が2人いるが、どこで情報を仕入れたのか復興応援国債を知り、金貨がもらえるならこれに貯金をしたいと言い出した。
復興応援国債に似た仕組みのものには、復興国債(変動金利10年物)がある。これは満期が10年の変動金利債で、金利水準は基準金利×0.66となっている。従って、両債券の相違は、発行から3年目までの金利水準と、記念貨幣がもらえるか、との2点である。
今回の4月発行の債券について、額面1000万円の債券の3年目までのキャッシュフローについて考えてみたい。復興応援国債の場合、利息としての毎年5,000円×3年=15,000円に加えて、10,000円の金貨を受け取ることが出来る。
一方の復興国債(変動金利10年物)の場合、初回利率は0.64%に決定しており、仮にこの水準が3年間続くとすると、毎年64,000円×3年=192,000円の利息を受け取ることが出来る。通貨としての価値で比較すると、たとえ金利が大幅に低下して、半年後以降の利息がゼロ(=10年国債金利がゼロ)になるとしても、復興国債からの受取額を、復興応援国債が上回ることが出来ないことになる。
ここで、記念貨幣としての価値について考えたい。「東日本大震災復興事業記念貨幣」は、1面は共通のデザインだが、もう1面は募集毎に公募するためデザインが異なる。素材・量目は、金貨は純金製で15.6g、銀貨は純銀製で31.1gとなる。また復興応援国債の購入者以外にも、造幣局より抽選で販売する予定であり、販売価格は発行時期の貴金属相場、製造コスト、発行枚数、需要等よるものの、現在の相場水準を元にすると金貨は7万円程度iii だろう。記念貨幣としての価値は、貴金属相場の上昇や、希少性に対するプレミアムの上乗せが期待できるかもしれない。
今回の応募額を見て、復興国債(変動金利10年物)の購入層のうち、約1/3の方が復興応援国債を購入したと思われる。経済的な合理性だけでなく、未曾有の震災からの復興を支援する強い気持ちを改めて感じた。復興に向けては、長期間に渡る多大な支援が必要である。残念ながら我が家には、金貨がもらえるほどの金額を復興応援国債に振り向ける余裕は無いが、出来る範囲での支援を長く続けていきたい。
新美 隆宏
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