2012年03月02日

金融市場の動き(3月号)~いきなりの円安をどう捉えるか?

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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  1. (いきなりの円安進行) 2月は月間4円を超える円安ドル高となった。為替介入を伴わないこのような円安は極めて稀である。これは「日本の貿易赤字化」、「米雇用統計の強い結果」、「欧州債務問題への警戒後退」が下地となる中で、「日銀の動き」が駄目押しした結果と考えられる。日銀決定会合前の市場は切迫した状況になく、追加緩和は大きなサプライズとなった。ただし、現在の情勢がさらなる円安ドル高への序章なのかについては、筆者はまだ懐疑的に見ている。今回の円安の動きは日米金利差と殆どリンクしていないためだ。日本の金利は殆ど下げ余地がないうえ、米金利はFRBによる時間軸長期化で上昇を抑制されている。米時間軸は今後短縮化される可能性はあるものの、目先の話ではないとみられる。現状を総括すると、複数要因が重なったことで円高是正の水準調整が入ったものの、本格的な円安トレンド入りと判断するには時期尚早との判断が妥当と思われる。
  2. (日米欧金融政策) 2月の金融政策は、欧米が現状維持、日本が物価目標明確化と併せて追加緩和を実施。最近は落ち着きがみられるが、各中銀とも欧州問題等による下振れリスクに対する警戒姿勢を維持しており、今後も緩和的スタンスを継続するだろう。
  3. (金融市場の動き) 2月の金融市場では、欧州不安の後退や堅調な米景気指標等を背景として世界的な株高と円安が生じた。しかしながら、これまでの一方向への動きで過熱感が出ているうえ、欧州問題に伴う下ぶれリスクは未だ高い状況にある。また、足元原油価格の上昇が進んでおり、金融市場の新たな波乱要因として浮上してきた。


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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

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