2011年12月02日

法人企業統計11年7-9月期~震災後の設備投資の落ち込みに歯止めがかからず

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・2四半期連続の減益
・設備投資は減少幅が拡大
・7-9月期・GDP2次速報は下方修正を予想

■introduction

財務省が12月2日に公表した法人企業統計によると、11年 7-9月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比▲8.5%(4-6月期:同▲14.6%)と2四半期連続の減少となったが、減益幅は前期よりも縮小した。震災後の供給制約が緩和されたことに伴い国内生産、輸出ともに持ち直したことから、売上高の減少幅が4-6月期の前年比▲11.6%から同▲1.9%へと縮小したことが減益幅の縮小につながった。ただし、原油価格高止まりの影響などから利益率が悪化したため、製造業の減益幅は4-6月期の前年比▲15.3%から同▲18.7%へと悪化した。非製造業は前年比▲2.7%(4-6月期:同▲14.2%)であった。
経常利益の内訳を業種別に見ると、東日本大震災によって寸断されたサプライチェーンの復旧に伴い、輸送機械は4-6月期の同▲90.2%から同▲38.2%へと持ち直したが、電気機械(4-6月期:前年比▲2.2%→7-9月期:同▲18.0%)、情報通信機械(4-6月期:前年比▲43.5%→7-9月期:同▲81.7%)は減益幅が拡大した。非製造業では、個人消費の回復を反映し、卸売・小売業は前年比8.2%(4-6月期:同6.4%)と好調を維持したが、電気業が6四半期ぶりに赤字(▲911億円)に転落した。
季節調整済の経常利益は前期比3.6%(製造業:前期比▲0.8%、非製造業:同5.8%)と3四半期ぶりの増加となったが、1-3月期(前期比▲6.8%)、4-6月期(前期比▲11.3%)の落ち込みからすれば戻りは弱く、震災前(10年10-12月期)に比べると15%程度低い水準にとどまっている。
売上高経常利益率は全産業ベースで3.0%となり、前年に比べ▲0.2ポイント悪化した(4-6月期:前年差▲0.1ポイント)。製造業は前年差▲0.6ポイント(4-6月期は同▲0.2ポイント)と3四半期連続の悪化、非製造業は前年から横ばい(4-6月期は同▲0.1ポイント)であった。製造業は売上の減少幅に比べ変動費、人件費の減少幅が小さく、このことが利益率の悪化につながった。
7-9月期の企業収益は震災後の供給制約の緩和を主因として4-6月期からは持ち直したものの、震災後の落ち込みを取り戻すまでには至らなかった。先行きについては、円高、海外経済減速の影響から輸出が弱含んでいることに加え、原材料高に伴うコスト増が引き続き収益の圧迫要因となるため、企業収益の改善ペースは緩やかなものにとどまることが見込まれる。経常利益は11年度いっぱい前年比で減少が続く可能性が高いだろう。

(2011年12月02日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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