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コラム
2010年12月09日
1.部分最適に終始する改革
今年も年の瀬が押し迫り、例年のように来年度予算編成に関する記事が、新聞紙面やテレビのニュースをにぎわしている。法人税率の引き下げや子ども手当ての増額と関連して配偶者控除の見直しを巡る議論などの記事が連日報道されている。
事業仕分けで各省庁の事業の無駄遣いが槍玉に上がったが、毎年度の予算編成時にも、財務省は、各省の予算要求を査定しており、事業の必要性や経費の無駄をチェックしている。こうした不断の事業のチェックは重要ではあるが、それは部分最適的な対応に過ぎない。予算編成に間に合わせなくてはならないという時間的制約の下で決めるためには、政治的な妥協も必要になる。この手法では、複雑な制度の改変や大規模な制度の変更、複数の制度にまたがる改革は、どうしても難しい。
事業仕分けで各省庁の事業の無駄遣いが槍玉に上がったが、毎年度の予算編成時にも、財務省は、各省の予算要求を査定しており、事業の必要性や経費の無駄をチェックしている。こうした不断の事業のチェックは重要ではあるが、それは部分最適的な対応に過ぎない。予算編成に間に合わせなくてはならないという時間的制約の下で決めるためには、政治的な妥協も必要になる。この手法では、複雑な制度の改変や大規模な制度の変更、複数の制度にまたがる改革は、どうしても難しい。
2.右肩上がりの発想からの脱却
日本経済が右肩上がりで成長していた時代は税収も順調に増え、新たに発生した問題に次々と対応していくことができた。しかし人口減少が始まり、経済の拡大速度が鈍化していく今後は、次々に発生する問題に対応するという右肩上がりの時代の発想は通用しない。限られた資金と人材をどう使うかということが問題になるが、世界に類を見ない程度にまで高齢化が進むことを考えれば、並大抵のことでは対応できるはずがない。日本の高齢化率は、2050年には39.6%となると予想されており、この水準は同年にドイツが32.5%、フランスが26.9%、米国が21.6%と予想されていることと比べて著しく高い。欧米と同じような改革をするだけでは、日本の場合には対応が不十分であることはまず間違いない。
急速に増加していく高齢者の医療や介護などの需要に対応するために、既存制度の無駄を削減するという発想だけでは、とても資金も人材も捻出できないだろう。複数制度にまたがるような大きな改革は、全体では大きなコスト削減となる最適な解決策であっても、それぞれの事業単独の改革としては他の事業の業務を抱え込むことになるのでコストの増加になることもある。改革の途中では事業の再編コストが必要になることもあるなど、部分最適化の考え方では実現しない。
急速に増加していく高齢者の医療や介護などの需要に対応するために、既存制度の無駄を削減するという発想だけでは、とても資金も人材も捻出できないだろう。複数制度にまたがるような大きな改革は、全体では大きなコスト削減となる最適な解決策であっても、それぞれの事業単独の改革としては他の事業の業務を抱え込むことになるのでコストの増加になることもある。改革の途中では事業の再編コストが必要になることもあるなど、部分最適化の考え方では実現しない。
(2010年12月09日「エコノミストの眼」)
櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)
櫨(はじ) 浩一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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