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都市ビジョンの重要性 ―まちを「こう変えたい」と意思表示する富山のマスタープラン

社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任 塩澤 誠一郎
環状線の1つの電停を降りて直ぐのところにある「グランドプラザ」は、再開発事業によって生まれた広場で、休日には様々なイベントが行われているようだが、筆者が訪れた平日の日中は、イベントこそなかったもののセントラムから降り立って広場に隣接する百貨店に向かう人の流れや、設置されたファニチャーでくつろぐ人々が見受けられた。
グランドプラザが面する総曲輪通り商店街は、再開発事業が行われる以前に訪れたときに比べ人通りが多く、再開発事業やLRT等の公共交通網整備の効果が現れていることが実感できた。
以前筆者は、市の中心部(まちなか)の空洞化が深刻さを増す中で、まちなかへの居住を推進するための方策を市民や市の職員と一緒に検討していたが、その後まちなか居住・住宅建設に対する支援措置が図られ、現在、まちなかの人口は転入により増加基調で推移している。
こうした公共交通網の充実や中心部のにぎわいづくり、まちなかや公共交通網周辺への居住誘導といった施策展開は、都市マスタープランに掲げた「コンパクトなまちづくり」という都市ビジョンの実現に向けて取り組まれているものだ。
富山市の都市マスタープランには、現状の都市構造を「こう変えたい」と、目指す将来都市構造が図示されている。これこそが富山市の他にはない都市マスタープランの特徴であり、今後、人口減少、超高齢社会を迎える多くの都市が考えるべき都市ビジョンの提示方法ではないかと筆者は考えている。
「こう変えたい」と明確にかつ分かりやすく示すことで、「こう変える」ための戦略的な施策が打てるのである。また、「こう変えたい」という意思表示は、そこに暮らす市民や関係する事業者等に対しても、「こう変える」ために協働する素地を与える効果もあるのではないかと思われる。
こうした都市ビジョンとそれを実現するための具体施策という関係を成り立たせることこそが都市マスタープランに期待された本来の役割ではなかったか。コンパクトシティを目指す先進都市富山で、改めて都市ビジョンの重要性を思ったのである。
(2010年09月17日「研究員の眼」)

03-3512-1814
- 【職歴】
1994年 (株)住宅・都市問題研究所入社
2004年 ニッセイ基礎研究所
2020年より現職
・技術士(建設部門、都市及び地方計画)
【加入団体等】
・我孫子市都市計画審議会委員
・日本建築学会
・日本都市計画学会
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