2010年02月24日

米国の州保険監督体制

松岡 博司

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米国では、保険会社の監督は州が行っており、各州の保険監督局で総勢13,632名(06年現在)の職員が働いている。金融全般(銀行、証券、保険等)を監督するわが国金融庁の総勢1,462名(09年度末定員)と比較すると、米国の保険監督体制が、一大産業とも呼びうる巨大な体制であることがわかる。部門別人員構成では、保険会社の財務健全性を監督する部門が最大部門となっており、消費者保護担当部門、保険数理(保険商品・保険料規制)部門、保険詐欺対応部門、免許(事業免許、販売員免許)部門、販売行動監督部門が続く(図表-1)。監督対象は保険会社にとどまらず、従業員福祉基金やマネージドケア、共済など多岐にわたっており、総計7,660社(機関)に及ぶ。これらに対し、年間1,287回の財務検査、1,044回の販売行動検査等が実施されている(図表-2)。
州による監督は、全米や複数州にわたって事業を行う保険会社に、各州から免許や商品認可を受けねばならないという非効率を強いる。そこで、銀行や証券のように、連邦による監督を導入して、個々の生保会社が州監督に服するか連邦監督に服するかを選択できるようにしてほしいとの要望を生保業界は表明している。
この要望は実現していないが、現在、米国議会では、保険会社の健全性に関する情報収集と監視を行うとともに保険監督に関する国際交渉の場で米国を代表する機関として、連邦保険局を財務省内に設置する法案が審議されている。連邦保険局は保険に関する直接的な監督権限を持つ機関ではないが、将来の連邦監督導入に向けた布石と見られなくもない。連邦監督が導入されると州毎の免許取得等が不要になるため、州の保険監督体制が現在の陣容を維持できる可能性は低い。州の監督官たちにとって、連邦監督問題はまさに生活をかけた問題であるようだ。

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