- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 保険 >
- 欧米保険事情 >
- 景気後退下の米国生保業界 -米国生保市場のトレンドは変化したか-
1
米国生保市場は世界最大の生保マーケットである。90年代初頭からソルベンシー危機や不正販売危機に見舞われたが、90年代後半以降は、米国経済の成長と株式市況の活況、投資ブーム等を受け、持続的・安定的な成長を続けてきた。しかし、今般の金融危機と、それに続く景気後退の下、米国生保を取り巻く環境は様変わりした。米国生保業界が、景気後退を一時的な停滞期として乗り越え、再び安定的な成長軌道へ戻るのか、それとも新しいステージに入るのか、現在は、その分岐点にある。
2
景気後退下、個人生命保険、個人年金の両分野で、米国生保の保険販売業績は落ち込みをみせている。
個人生命保険では、従来の牽引役であった変額ユニバーサル保険、ユニバーサル保険にかげりが見え、伝統的な生命保険商品である終身保険、定期保険に脚光があたってきている。
個人年金では、投資ブームの中で米国生保市場の成長をもたらしてきた変額年金の人気が衰え、定額年金の販売が増加している。変額年金は米国生保の成功を象徴する商品であったが、金融危機を境に、収益の圧迫要因、リスク要因と見られるようになっている。
3
景気後退は、保有資産の価格低下による投資損失を発生させ、資産運用面に直接的な影響をもたらした。金融危機のさなかには、資本が減少した生保会社が資本市場の機能麻痺の中で、資本調達の困難に直面し流動性危機に陥るのではないかとの観測も出て、特に上場会社が苦しんだ。
4
大統領の指示により行われている金融監督全般の見直しの中では、州が担当してきた保険監督に連邦がどのように関与するかが注目されていたが、6月に財務省が提出した報告書では、保険会社の状況をモニタリングする連邦機関を作るという案となっている。
5
株価連動の変額年金や変額ユニバーサル保険を主力商品に、高い成長を遂げ、資本市場における好評価を得て資本調達を実施、M&Aでさらなる拡大を果たす、というエクイティ連動型の成長モデルは大きな分岐点にさしかかっている。一方、従来型の地道な生保経営が見直されている。新しい米国生保の経営軸が現れることが期待される。
(2009年08月26日「ニッセイ基礎研所報」)
松岡 博司のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/03/13 | 英国生保市場の構造変化-年金事業への傾斜がもたらした繁忙とプレーヤーの変化- | 松岡 博司 | 基礎研レポート |
2024/03/12 | 主要国の生保相互会社の状況-各国で株式会社と相互会社の競争と共存が定常化-デジタル化等の流れを受けた新しい萌芽も登場- | 松岡 博司 | 基礎研レポート |
2023/09/05 | コロナパンデミック前後の英国生保市場の動向(1)-年金を中核事業とする生保業績- | 松岡 博司 | 保険・年金フォーカス |
2023/07/19 | インド生保市場における 生保・年金のオンライン販売の動向-デジタル化を梃子に最先端を目指す動き- | 松岡 博司 | 保険・年金フォーカス |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年09月17日
今週のレポート・コラムまとめ【9/10-9/13発行分】 -
2024年09月13日
ECB政策理事会-予想通り利下げ、今後は引き続きデータ次第 -
2024年09月13日
自動車保険料率の引き上げに向けた動き-自動車保険と傷害保険の参考純率の改定 -
2024年09月13日
インド消費者物価(24年8月)~8月のCPI上昇率は小幅上昇も2ヵ月連続で物価目標を下回る -
2024年09月12日
外国株式ファンドが一時、売却超過に~2024年8月の投信動向~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
【景気後退下の米国生保業界 -米国生保市場のトレンドは変化したか-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
景気後退下の米国生保業界 -米国生保市場のトレンドは変化したか-のレポート Topへ