コラム
2009年08月21日

オリンピックはどこへ行く

土堤内 昭雄

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来る10月2日、デンマークのコペンハーゲンで開催される第121次国際オリンピック委員会(IOC)総会で、2016年の第31回オリンピック競技大会の開催都市が決まる。今回は、東京の他にアメリカのシカゴ、スペインのマドリード、ブラジルのリオデジャネイロの3都市が立候補しており、残された1ヶ月あまりの期間も熾烈な招致競争が展開されるだろう。

1964(昭和39)年の東京オリンピック(第18回オリンピック競技大会)は、首都高速道路や東海道新幹線が開通するなど日本が高度経済成長を続けるなかで、日本社会の戦後復興をアピールする象徴的な出来事だった。それから半世紀を経て開催される2016年のオリンピックは、成熟した東京が世界に向けて新たなメッセージを発する好機であろう。

東京オリンピック・パラリンピック招致委員会のホームページに示された今回の招致プランは、オリンピックスタジアムを中心として半径8キロ以内にほとんどの競技会場を配置する世界一コンパクトな計画だ。31の競技施設のうち既存施設の利用が21、新設はわずか5施設とのことである。また、環境負荷を限りなくゼロに近づけるカーボンマイナス・オリンピックを目指し、環境と共存する未来の都市像を基本コンセプトとしている。

ただ、東京の街を歩いて感じることは、都民をはじめとした日本国内の市民レベルでの招致の盛り上がりが欠けていることだろう。2008年6月の世論調査(同招致委員会ホームページ)では7割の人が2016年の東京オリンピック開催について「(どちらかといえば)賛成」と回答しているものの、実際には都庁やJOC関係者等の奮闘振りだけが目立つように感じられる。

東京のライバル都市・シカゴのオリンピック招致のホームページでは、8キロ圏内の競技施設の集中配置計画やミシガン湖畔の豊かな水と緑を活かした都市の自然環境をアピールしている他に、シカゴの特徴として人種や文化、地域のダイバーシティ(多様性)を紹介している。また、地域との関係の記述も多く、地域社会に支持されたオリンピック開催を目指していることがうかがえる。

今回の招致都市はいずれも独自の歴史や文化を有する魅力ある都市である。開催地の選択は、まさに近代オリンピックの開催意義を何に求めるかを問うことといえよう。オリンピック開催地の行方は、オリンピックが将来に何を目指そうとしているのか、文字通りその行方を占うことにもなるだろう。
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(2009年08月21日「研究員の眼」)

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