コラム
2009年08月18日

日本が「世界第二」の肩書きを失う時

櫨(はじ) 浩一

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1.転落は時間の問題

今年4月に発表されたIMFのWorld Economic Outlookでは、中国は2010年にはGDPが5.3兆ドルとなり、4.7兆ドルの日本を抜いて世界第二の経済大国となると予測している。IMFは7月に見通しを改訂して、中国の経済成長率の見通しを引き上げた。日中の経済規模の差はごくわずかで、中国の成長率が少し上ブレすれば2009年中に日中のGDP逆転が起こる可能性もある。逆に為替レートが円高に進んだりしてドル換算した日本のGDPが膨らむと2010年でも中国に追い越されないという可能性もある。

こうした微妙な時期の差はあるものの、ここ数年の内には確実に中国のGDPが日本を上回る規模となるはずだ。日本は早晩、四半世紀にわたって使い慣れてきた「世界第二の経済大国」という肩書きを失うことになる。
日米中のGDP

2.何を目標にするか

第二次世界大戦直後の日本に、いつか世界第二の経済大国になると思っていた人はほとんどいなかっただろう。しかし、高度成長期を経て欧州各国を追い抜いて世界第二の経済大国となった。世界一にというのは夢に過ぎないとは思っていたとしても、米国に少しでも迫ろうと努力を続けてきた。GDPには指標として批判もあったが、経済政策の目標としては分かりやすかった。

中国が高成長を続けていく中で、再び世界第二の経済大国の座を取り戻そうという目標は現実的ではない。むしろ長い年月の間には、中国と同じように人口規模が日本の10倍以上もあるインドも、日本に追いつき、追い越す可能性が高い。世界第二の奪還が難しいだけでなく、第三という地位を守ることも、いずれ難しくなるだろう。2050年には日本の人口は世界で第16位に後退すると予想されており、経済規模も徐々に後退していかざるを得ないだろう。

3.規模に代わる新たな目標

経済大国というのが目標にならないとすれば、日本経済は何を目指して進むべきだろうか?経済学者やエコノミストは「一人当たりGDP」と答えるだろうが、もう少し色々な要素を考えるべきではないか。

総理大臣の諮問機関であった国民生活審議会は7月30日に最後の総会を開き、44年間の歴史に終止符を打った。同審議会は、消費者行政を推進してきたことで知られるが、「くたばれGNP(当時はGDPではなくGNPが使われていた)」、などの批判に対して、お金に換算できない健康や安全などを含めた社会指標や国民生活指標などの、豊かさを表す総合指標作成を推進したことも忘れてはならない。

経済成長は豊かな生活を支える基盤として重要だが、量的な拡大によって何が達成できたのかを測る質の指標が必要ではないだろうか。
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