2008年12月04日

法人企業統計08年7-9月期~企業収益、設備投資の減少加速、7-9月期の成長率は下方修正の公算

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・3四半期連続の減収減益
・製造業の設備投資が22四半期ぶりの減少
・7-9月期は年率1%を超えるマイナス成長に下方修正の見込み

■introduction

財務省が12月4日に公表した法人企業統計によると、08年7-9月期の全産業(金融業、保険業、金融機関を子会社とする純粋持株会社を除く、以下同じ)の経常利益は前年比▲22.5%(4-6月期:同▲10.5%)となり、5四半期連続の減少となった。売上高の減少が続いた(4-6月期:前年比▲0.9%→7-9月期:同▲0.2%)ことに加え、原材料高による利益率の悪化幅が拡大したため、減益幅は前期から大きく拡大した。
売上高経常利益率は全産業ベースで2.7%となり、前年同期よりも▲0.8ポイント悪化した。製造業が▲1.2ポイント、非製造業が▲0.6ポイントの悪化となった。
製造業、非製造業ともに、引き続き原材料高に伴う変動費率の上昇が利益率の悪化要因となっているが、7-9月期は非製造業の悪化幅が急拡大した。また、これまでプラス寄与を続けてきた金融費用が小幅ながらも利益率の押し下げ要因に転じた。
経常利益を業種別に見ると、製造業が前年比▲27.6%(4-6月期:同▲11.7%)、非製造業が前年比▲18.7%(4-6月期:同▲9.4%)となった。
製造業は、原材料高によるコスト増に加え、輸出減速に伴う売上高の低迷が収益の圧迫要因となっている。貿易統計の輸出数量指数は、08年1-3月期の前年比9.6%から4-6月期が同5.3%、7-9月期が同2.6%と伸び率が急速に低下し、10月には前年比▲6.4%と大幅なマイナスとなった。製造業の売上高は輸出減速に歩調を合わせる形で、08年1-3月期の前年比5.9%から4-6月期に同1.4%へと伸びが鈍化した後、7-9月期は同▲1.5%と6年ぶりに減少に転じた。
経常利益の内訳を業種別に見ると、製造業では、石油・石炭は前年比1.6%の増加となったものの、輸出の不振が続く輸送用機械が前年比▲36.9%と大きく落ち込んだほか、電気機械(同▲51.3%)、情報通信機械(同▲51.0%)、金属製品(同▲52.3%)の経常利益が半減した。
非製造業では原燃料費高騰によるコスト増が続く電気が4期連続で赤字(▲1,213億円)、マンション販売低迷の影響などから、建設業(前年比▲97.2%)が大幅減益となったほか、個人消費低迷を反映し、卸売・小売業(同▲3.6%)が減益となった。サービス業は増益を維持したものの、7-9月期の前年比63.8%から1.6%へと伸び率が急速に鈍化した。
原油などの国際商品市況はこのところ大幅に下落しているため、コスト増による収益の下押し圧力は10-12月期以降、縮小に向かう公算が大きい。一方、海外経済の減速に伴う輸出の減少、個人消費を中心とした内需の低迷から、製造業、非製造業ともに売上高の減少は今後も継続することが見込まれる。当面は、交易条件の改善によるプラス効果を売上減少によるマイナス効果が上回る形で、企業収益の大幅な減少が続くだろう。
労働分配率(当研究所による季節調整値)は65.2%となり、4-6月期の62.1%から大幅に上昇した。製造業が+3.3%ポイント、非製造業が+2.8%ポイントの上昇となった。収益環境の悪化を背景に、人件費は4-6月期の前年比▲1.8%に続き7-9月期も同▲2.3%の減少となったが、収益の悪化スピードがそれを大きく上回っているため、労働分配率は上昇基調に転じている。今後、企業の人件費抑制姿勢は一段と強まることになりそうだ。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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