2008年07月18日

白川総裁講演(7/18):景気悪化と物価上昇のリスクのウエートは5対5

総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次

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■見出し

・講演:難しい課題に直面している
・会見:景気悪化と物価上昇のリスクのウエートは5対5

■introduction

白川総裁が7月18日に内外情勢調査会で講演を行った。筆者は白川総裁就任後初めて聴講した。
講演は「経済・物価の見通しと当面の金融政策運営」と「金融政策運営に関する中央銀行の情報発信」の2部構成。その後、藤原作弥・元日銀副総裁が白川総裁に質問を行った。
講演で白川総裁は、景気下振れ・物価上振れリスクが高い状況にあるとの認識を示したが、先行きは「当面減速を続けるが、深い調整局面に陥ることはなく、その後は次第に緩やかな成長経路に復していく可能性が高い」と述べた。
深い調整にならない要因として、(1)外的ショックに対する頑健性が高い、(2)国内金融システムがサブプライムでそれほど痛んでいない、(3)世界経済の成長がなんとか維持される、を挙げた。
また物価については「二次的効果が発生している訳ではない」との認識を示したが、「当面は上振れをもたらすリスク要因への注意を怠れない」と述べた。
内容的には直近の金融経済月報や総裁会見などと同じで目立った見解はなかったが、説明が丁寧で頭の整理が非常にできた。
続く情報発信については、かなり白川総裁の思い入れもあり(総裁就任直後から「リスク・バランス・チャート」の導入や7月の強化策など独自色を強く打ち出している)、具体的かつ踏み込んだ説明がなされているという印象を受けた。
講演後、藤原氏は(1)物価圧力をどうみているのか、(2)景気悪化と物価上昇のリスクのウエートは、(3)情報発信の強化で、逆に数字が一人歩きするリスクが高まったのではないか、(4)2人欠員の体制について質問を行った。
白川総裁は(2)について「景気悪化と物価上昇についてリスクのウエートは5対5」と答えた。筆者はこのわかりやすい数字による回答が、(3)の質問に絡んで考えると数値が一人歩きするのでは思った。次回以降の決定会合後の会見で格好の質問材料となってしまったような気がする。
講演の要約は以下のとおり。

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総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

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