コラム
2008年07月17日

自転車のスタイルにみる世相

栗林 敦子

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朝8時過ぎ、たくさんの同じスタイルの自転車が同じ方向に走る。その自転車のスタイルとは、前後に子どもを乗せ、後ろの荷台の両脇には大きな布袋をぶら下げた、正真正銘のママチャリである。袋の中には子どもの着替えや生活グッズ、自転車が目指すのは駅のそばの保育園。重たそうに体を揺らしてその自転車をこぐのは、小綺麗なファッションに身を包んだお母さんたちである。子どもを預けてから、近くの駅で電車に乗り都心の職場に向かうのだろう。子どもを持ち、しっかりと働いている女性が増えていることを実感する。

月曜日の早朝、こちらも、前の籠、後ろの荷台に大きなビニール袋を積み上げた自転車が町中を徘徊する。その日は筆者の住む地域の資源ゴミの回収の日、積み上がっている袋の中は色とりどりの空き缶である。自転車の荷台に、キャリーカートをつなげ、そこにさらに膨らんだビニール袋を載せて牽いている場合もある。風体からして、その自転車をこぐのは、近くの都立公園に住む人々と想像できる。その自転車を道ばたのゴミ収集場所にとめ、数人で缶の分別をしていることもある。資源価格が高騰し、回収した空き缶も高値になっているのだろうか。彼らの生活は少し楽になるかもしれないが、諸物価の上昇で、1円でも安い商品を求めていくつかのスーパーを自転車で巡る主婦も増えている。

とある土曜日の午後、自転車を押しながら歩く30代独身といった感じの女性に道を聞かれる。下北沢まで自転車で行ったがパンクしてしまい、自転車店を探しているが見つからないとのこと。そういえば、筆者の住む地域にはかつてはいくつかの自転車店があったが、今残るのは商店街の端に位置する1店のみである。ガソリン代高騰の中で、自家用車から自転車へという動きも出ている。車なしで買い物に行ける近所の商店街に元気を出してもらわないと困るが、自転車利用者にとっては、自転車店が復活しないと大変だ。

そういう筆者の持つ自転車は、カッコ優先で泥よけすらない。低炭素社会に向け、決して自転車マニアでもないし、ママチャリ愛用者でもないが、今後どのように自転車とつきあって行こうか思案中である。
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