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コラム
2008年01月15日
1.注目浴びる特別会計の積立金
特別会計の中には多額の積立金や剰余金を保有しているものがあり、これを使えば財政再建のために増税をする必要はないのではないかという議論が盛んである。確かに、国の一般会計は大幅な赤字が続いてきたが、特別会計の中には毎年度の予算を使い残すものもある。塩川元財務大臣は、こうした状況を「母屋ではお粥を啜っているのに、離れではすき焼きを食べている」と揶揄した。
一般会計も特別会計も国会での審議を経て決定されるものの、注目を浴びるのは一般会計の方ばかりで、特別会計はあまり注目されてこなかった。こうした状況になった背景には、特別会計はそれぞれの所管官庁の権限が強く、国の会計を預かる財務省もあまり口が出せなかったということもあるだろう。財政の立て直しにとって、これまで注目されることが少なかった特別会計の見直しを行うことは重要なことである。
一般会計も特別会計も国会での審議を経て決定されるものの、注目を浴びるのは一般会計の方ばかりで、特別会計はあまり注目されてこなかった。こうした状況になった背景には、特別会計はそれぞれの所管官庁の権限が強く、国の会計を預かる財務省もあまり口が出せなかったということもあるだろう。財政の立て直しにとって、これまで注目されることが少なかった特別会計の見直しを行うことは重要なことである。
2.ストックとフロー
しかし、そもそも埋蔵金はストックであり財政赤字はフローだという決定的な違いがある。国債残高は2007年度末で546兆円、2008年度末には553兆円にのぼるから、多額の埋蔵金があるという主張では数十兆円とも言われる特別会計の積立金を差し引いてもまだ、約500兆円もの国債という債務が残る。もちろん特別会計の積立金取り崩して国債残高を減額すれば、国のバランスシートの負債も資産も両建てで縮小するので、バランスシートの改善にはならないが縮小にはなる。フローへの効果は積立金がどのように運用されているのかにもよるが、国債残高が減少することによって利払い費が縮小するという効果があることは確かだ。
とは言うものの埋蔵金の発掘というバランスシート縮小によるフローの財政赤字縮小効果に大きな期待をするのは難しい。現在の長期金利1.5%程度の水準で考えると、仮に50兆円の債務削減を行っても、利払い費の縮小は7500億円に過ぎない。2006年度の決算では一般会計の利払い費は7兆円で、2008年度予算では9.3兆円が見込まれているから、利払い費を1割程度縮小できるに過ぎない。
とは言うものの埋蔵金の発掘というバランスシート縮小によるフローの財政赤字縮小効果に大きな期待をするのは難しい。現在の長期金利1.5%程度の水準で考えると、仮に50兆円の債務削減を行っても、利払い費の縮小は7500億円に過ぎない。2006年度の決算では一般会計の利払い費は7兆円で、2008年度予算では9.3兆円が見込まれているから、利払い費を1割程度縮小できるに過ぎない。
3.取り崩しの困難な積立金も
もうひとつ難しい問題は、取り崩しの困難な積立金があることだ。例えば、外国為替資金特別会計では、財務省証券を発行して円を調達するので利払いの負担がある一方、保有している米国債などからはドル建ての利子収入がある。日本の国内金利は短期金利が0.5%程度という低水準であるのに、米国のFFレートは4%程度もあったので内外の金利差から、運用益が貯まっている。しかし特別会計にはドルで資金が貯まるがこれは会計上の利益で、円で実現された利益ではなく簡単には使えないものだ。ドル資産を売却して円に換えることができれば簡単だが、為替レートが不安定になる恐れもある。
埋蔵金という形で特別会計が注目を浴びたのは絶好の機会であり、これを利用して特別会計の見直しをするべきだ。しかし埋蔵金が無尽蔵にあるわけではなく、特別会計の積立金を使えば大丈夫ということで歳出削減の努力が疎かになっては困る。
埋蔵金という形で特別会計が注目を浴びたのは絶好の機会であり、これを利用して特別会計の見直しをするべきだ。しかし埋蔵金が無尽蔵にあるわけではなく、特別会計の積立金を使えば大丈夫ということで歳出削減の努力が疎かになっては困る。
(2008年01月15日「エコノミストの眼」)
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