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経済学では、長期の世界において「期待」と「現実」が一致する。長期に到るまでに、異質な期待形成を有する経済主体は、現実を観察しながら学習し、合理的期待形成を行っていく。これら合理的期待形成の中核となる仮説の正否に関して、わたしたちが観察できる情報源として、大きく分け三つのデータがある。一つはサーベイ・データ、二つは金融資産価格、三つには「予測市場」で取引される予測である。本論文の目的は、これらを用いた期待形成に関する先行研究について、合理的期待形成仮説を軸としてサーベイすることにある。
Pesaran and Weale(2005)が指摘するように、合理的期待形成の下で経済主体が真の経済構造モデルに対する完全な情報を有していると仮定することは、明らかに非現実的である。不完全な情報の下で経済主体が学習過程を繰り返しているのが、真の姿であろう。また、とりわけ金融政策の議論で重視されるように、マクロ経済構造に関して、データおよびモデルに関する不確実性が存在する場合、これら二つの不確実性の下での最適な意思決定を考えるには、経済主体による異質な期待形成について考慮する必要がある。その上で、サーベイ・データ、金融資産価格及び予測市場に見られる期待の指標は、十分な情報を与えてくれる。
(2007年09月26日「ニッセイ基礎研所報」)
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