- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 欧州経済 >
- 8月ECB政策理事会~9月利上げに布石、市場の調整を注視
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
■見出し
・インフレ・リスクへのスタンスを「強く警戒」に引き上げ
・経済指標はピーク・アウトしつつあるが、なお強さを保つ
・注目される9月理事会後のコメント、見通しの改定内容
■introduction
・電話会議終了後、記者会見を開催
2日、欧州中央銀行(以下、ECB)の8月の政策理事会が、当初予定通り、電話会議の形式で行われ、政策金利の据え置きを決めた。会議終了後、当初予定されていなかった記者会見が、プレス・ブリーフィングとして開催され、トリシェ総裁が通常よりも簡単なコメントを述べた後で、質疑応答が行われた。
今回のトリシェ総裁のコメントと質疑応答のポイントは以下のようなもので、経済の力強い拡大が続いていることを受けて、インフレ・リスクへのスタンスを「強く警戒」に引き上げ、9月利上げに布石を打つ一方、9月以降については明言を避け、今後の情勢の変化、特に調整過程にある市場の動きを注視する姿勢が強調された。
(1) インフレ・リスクのスタンスは、「注視」、「特に注視」、「強く警戒」の3段階のうち最も強い「強く警戒」に引上げられた。質疑応答では、「強く警戒は(翌月の利上げを示唆する)従来と同様の意味で用いた」とする一方、9月以降については「事前の約束はしない」とし、「事実と指標、情勢の変化を見極めた上で判断する」ことを強調した。
(2) 景気に関しては、「前回理事会後の情報によって(安定した成長という)見通しは確認された」とし、質疑応答では「IMFの世界並びにユーロ圏経済見通しの上方改定」や「失業率が過去26年で最も低い水準にあること(6月:6.9%)」に大いに注目すべきと述べた。
(3) インフレ・リスクは「上振れ方向」にあり、リスク要因として、原油価格の上昇、設備能力の制約、賃金とコストの上昇圧力について言及した。
(4) 市場は「リスクの再評価」という「デリケートな局面」にあり、市場の動向、特にセンチメントの変化は“need careful monitoring”として強い警戒を示した。ドイツの中堅金融機関のサブプライム投資による損失が表面化し、金融危機への懸念が広がっていることに関する質問に対しては、ECB理事会のメンバーであるドイツ連銀のウェイバー総裁による「金融危機への懸念には全く根拠がなく、米国の不動産市場へのエクスポージャーは全体としては限定的である」とする公式見解に「付け加えることは何もない」と述べた。
(2007年08月03日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1832
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
伊藤 さゆりのレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/18 | トランプ関税へのアプローチ-日EUの相違点・共通点 | 伊藤 さゆり | Weekly エコノミスト・レター |
2025/03/28 | トランプ2.0でEUは変わるか? | 伊藤 さゆり | 研究員の眼 |
2025/03/17 | 欧州経済見通し-緩慢な回復、取り巻く不確実性は大きい | 伊藤 さゆり | Weekly エコノミスト・レター |
2025/03/07 | 始動したトランプ2.0とEU-浮き彫りになった価値共同体の亀裂 | 伊藤 さゆり | 基礎研マンスリー |
新着記事
-
2025年05月02日
金利がある世界での資本コスト -
2025年05月02日
保険型投資商品等の利回りは、良好だったが(~2023 欧州)-4年通算ではインフレ率より低い。(EIOPAの報告書の紹介) -
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【8月ECB政策理事会~9月利上げに布石、市場の調整を注視】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
8月ECB政策理事会~9月利上げに布石、市場の調整を注視のレポート Topへ