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1. 主役はチューリッヒの小鬼から主婦へ
為替市場を動かしているのは、銀行でもヘッジファンドでもない。かつてのチューリッヒの小鬼に代わって日本の主婦が為替市場を動かしている。日本銀行の西村審議委員は、ブルッキング研究所での講演で、こう指摘した。ゼロ金利政策をようやく脱して日銀が緩やかな利上げを目指しているとはいうものの、日本の国内金利は依然として超低金利である。家計の中には低金利の円に見切りを付けるものも増え、より高い金利の外貨建て資産での運用が活発となっている。外貨建て投信など家計が保有している外貨建て資産は大幅に増加しており、円安の動きを支えている。
西村審議委員の指摘では、家計の外貨投資は相場の動きに対して「逆張り」であり、市場の変動を抑制し、為替市場を安定化する働きをしているという。外貨建て投資の増加による円安も、日本経済がバブル崩壊による長期の低迷から抜け出すのに、大きな助けとなったことは明らかだ。円安水準のおかげで経常収支の黒字幅は、名目GDPの4.5%に達している。輸出採算の改善によって輸出企業の利益にも貢献しており、このところの企業収益の増加にも繋がっている。
家計の外貨建て資産購入の動きは、言うことなしという気もするが、全く問題はないのだろうか?
2. 地下で増大する円高のマグマ
米国の経常収支の赤字はGDPの6%程度にものぼる高水準であり、ユーロは1ユーロ1.36ドル程度にまで上昇している。割安に置かれているといわれてきたアジア通貨も、韓国ウォンやタイバーツなどをはじめとして徐々に上昇している。一方、円の動きを日本銀行が発表している実質実効為替レートで見ると、2007年6月の水準は93.4となり、プラザ合意による大幅な円高が起こる直前である1985年9月の94.8を下回る水準にまで円安が進んでいる。為替のコントロールを行っている中国元も緩やかながら上昇をしており、ひとり円だけが下落基調を続けている構図である。
日本の主婦は、プロの投資家の逆張りをすることで、ここまで利益を上げてきたと、西村審議委員は指摘している。家計の外貨建て資産への投資拡大が円安を加速し、外貨資産の収益率が上昇した。家計の逆張り戦術によって、為替市場の変動が縮小したので逆張り戦術は成功し易くなった。しかし実質実効為替レートの動きは、大幅な円高のマグマが地下にたまっていることを示唆している。果たしてマグマが噴出するような大きなショックが発生した時に、日本の主婦をはじめとした投資家たちはうまく対応できるだろうか?

(2007年07月09日「エコノミストの眼」)
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