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- 生命保険加入プロセスにおける考慮集合の形成と満足構造
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消費者が生命保険加入時に形成する考慮集合のサイズは、認知段階である知名集合で20 社程度、具体的に加入を検討する会社数である想起集合では1~4社程度と、先行研究に比べ考慮集合のサイズは拡大しているものの、依然として必ずしも広く認知されている会社すべてが加入検討の対象とはならないことが明らかとなった。
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考慮集合の形成に対する情報源の影響では、マスメディアやFPからの紹介、インターネット上のポータルサイトを通じて知名集合は拡大し、想起集合のサイズは新聞・雑誌の記事や広告、DM、インターネット上の金融や保険に関するポータルサイトや生命保険の比較サイト、口コミサイト・掲示板により喚起・形成されることが明らかとなった。想起集合のサイズに影響を及ぼす情報源はいずれも活字を中心とした媒体であり、このような媒体による情報は記録や保存も容易であることから、加入の検討段階にある消費者にとって代替案として認知しやすいのではないかと考えられる。
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このような情報源を利用した情報探索行動により形成された想起集合が生命保険の満足構造に与える影響について、満足度およびロイヤルティ(継続意向)を被説明変数とした回帰分析を行ったところ、想起集合のサイズは満足度を有意に高める効果を持つものの、ロイヤルティについては逆に、引き下げる効果を持つという結果となった。ロイヤルティに対する分析結果は、消費者の情報処理能力の限界等の要因が作用したためと考えられる。
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また、情報探索活動に対する評価としての納得度概念を含めた満足構造の仮説モデルを構築し、実際のデータをもとに検証したところ、想起集合内の代替案を(1)比較検討したこと(2)比較検討を通じて商品の特性や会社間・商品間の差異などの詳細を理解したこと、の2つの理由から納得度が増し、結果的に満足度やロイヤルティの向上にも寄与することが明らかになった。
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本稿の分析結果を通じて、他社比較を行なうことは消費者の納得度向上を通じて消費者の満足度やロイヤルティ向上に寄与するものの、単純に多くの会社間で比較すればよいというものではなく、消費者の知識や情報処理能力により、比較検討数と満足度やロイヤルティとの関係には一定の制約がある可能性が示唆された。今般、保険業界3団体により設置された比較広告に関する協議会においては、比較広告の内容にとどまらず、消費者の知識や情報処理能力に即して比較検討を支援する仕組や、消費者の理解を助ける情報提供のあり方についても、あわせて議論が深まることを期待したい。
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生命保険市場をめぐっては、今後、郵政民営化に伴って競合関係の変化や、郵便局会社という新しいチャネルの出現が予定されている。また、年末には銀行窓販の全面解禁も予定されるなど、生保各社は製販分離の進展という大きな構造変化に直面している。今後は消費者の満足構造についても、従来のサービスマーケティングの枠組みを超えた詳細な研究が必要になろう。
(2007年06月25日「ニッセイ基礎研所報」)
井上 智紀
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