コラム
2005年05月25日

勉強するとお金持ちになれない?

櫨(はじ) 浩一

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1.お金持ちになる方法

どうしたらお金持ちになれるのかは、誰しも知りたいことだろう。京都大学橘木教授らの「日本のお金持ち研究」は日本の高所得者を調査した珍しい本だ。これによれば、「お金持ち」と言われる人達は、決して特別な才能の持ち主というわけではなく、長年一生懸命に努力した結果であるという。少しホッとする結論ではあるのだが、今の子供たちが大人になったときにも、同じような社会が続いているとは限らない。同書は、いわゆる一流大学・一流企業というコースがもはやお金持ちへの道ではなくなっているということも指摘している。(「日本のお金持ち研究」日本経済新聞社、橘木俊昭・森剛志)

2.「末は博士」の現実

最近、「はくしが100人いるむら」というホームページを教えてもらった。「はかせ」ではなくて「はくし」と呼び、しかも全文がひらがなだらけという変わった文章は、学者を目指す人達の間で、自虐的な意味で大分前から話題になっていたらしい。毎年うまれる100人の「はくし」の中で、大学の先生となって学者への道に進めるのはわずかに14人だけで、16人は無職であるという。さらに8人がどうなったのか不明で、このホームページではこの人達があたかも行方不明や自殺者であるかのような書き方となっているので、この話題を扱ったサイトではミスリーディングではないかという批判もある。だが、多少の誇張はあるものの数字は文部科学省の調査に沿ったもので概ね正しく、学者への道がなかなか険しいのは確かだろう。

昔は、「末は博士か大臣か」という言葉もあったが、「博士」と「大臣」では随分価値が変わってしまった。もっとも、昔の「博士(はかせ)」は学者の中でも特に優れた人を指す言葉だったが、現在の「博士(はくし)」号は学者の免許証に近い印象である。したがって、この格差は割り引いて考えなくてはならないが、それにしても博士がそこに到達するまでの時間や努力、費用の割には経済的にも社会的にも魅力が無いという印象は免れない。


3.夢の高額納税者

5月16日に発表された2004年度の高額納税者番付では、初めてサラリーマンが高額納税者の第一位となり話題を呼んだ。バブルの頃に幅を利かせた土地長者は高額納税者が上位100人の中でたったの5人に減少し、親の資産が無ければ高所得者にはなれないという状況が変わって、サラリーマンが第一位になったというのは、我々普通の人間にも少し希望が持てるだろう。

だが日本経済の将来を考えると、高額納税者の番付に登場したサラリーマンが金融関係者ばかりというのもちょっと不安である。1400兆円の個人金融資産があり、対外純資産が170兆円にものぼる日本経済にとって、金融業、それも資産運用が重要な職業であることは間違いない。しかし、こうした分野にばかりに人材が集中してしまっても困る。

「博士号取得者が就職できないのは、大学に職を求めることにこだわり過ぎるからだ」という批判もあるが、日本の製造業を支えて行く科学や技術を支える人達も、もう少し報われる社会にしていかなくては、いずれこうした職業を目指そうという若者もいなくなって、日本の製造業も衰退してしまうのではないだろうか。


(2005年05月25日「エコノミストの眼」)

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