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コラム
2001年06月04日
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1.駆け込み需要で家電4品目の販売額が急増
4月から家電リサイクル法が施行された。この法律は生活環境の保全や資源の有効活用等を目的としており、テレビ、エアコン、洗濯機、冷蔵庫の4品目については、買い替え時のリサイクル費用を購入者が負担することになった。
この法律の施行を前に、消費者はどのような行動をとったのだろうか。
該当4品目の購入額は、年初から急増し、3 月には前年比で約2 倍となった。また、家電製品の買い替え理由は通常、「故障」によるものが大半であるが、この3 月に調査された内閣府の「消費動向調査」では、「故障」による買い替えの割合が大きく低下し、「上位品目への移行」、「その他」の理由による買い替えの割合が増えている。家電リサイクル法施行に伴う負担増を避けるために、駆け込みで買い換えを行った消費者が多かったことを裏づけている。
この法律の施行を前に、消費者はどのような行動をとったのだろうか。
該当4品目の購入額は、年初から急増し、3 月には前年比で約2 倍となった。また、家電製品の買い替え理由は通常、「故障」によるものが大半であるが、この3 月に調査された内閣府の「消費動向調査」では、「故障」による買い替えの割合が大きく低下し、「上位品目への移行」、「その他」の理由による買い替えの割合が増えている。家電リサイクル法施行に伴う負担増を避けるために、駆け込みで買い換えを行った消費者が多かったことを裏づけている。
駆け込み需要は97 年4 月に消費税率が3%から5%に引き上げられる直前にも生じた。その時の規模は約2兆円という非常に大きなものであったため、97 年1-3 月期の民間消費を約3%押し上げるという影響があった。
<駆け込み需要による消費押し上げ効果は0.3%>
それでは、家電リサイクル法に伴う駆け込み需要は、民間消費全体にどれだけのインパクトを与えたのだろうか。
今回の駆け込み需要は、消費税率引き上げ時とは異なり消費全体に占めるウェイトが1%にも満たない家電4品目に限られている。当研究所の試算によれば、4品目合計の駆け込み需要は約2000億円と消費税率引き上げ時の約10 分の1 であり、これにより2001 年1-3 月期の民間消費は0.3%押し上げられたと推計される。
0.3%という押し上げ効果は、消費税率引き上げ時と比べるとかなり小さい。しかし、消費の低迷が続いている中では無視できる数字とはいえないだろう。
<駆け込み需要による消費押し上げ効果は0.3%>
それでは、家電リサイクル法に伴う駆け込み需要は、民間消費全体にどれだけのインパクトを与えたのだろうか。
今回の駆け込み需要は、消費税率引き上げ時とは異なり消費全体に占めるウェイトが1%にも満たない家電4品目に限られている。当研究所の試算によれば、4品目合計の駆け込み需要は約2000億円と消費税率引き上げ時の約10 分の1 であり、これにより2001 年1-3 月期の民間消費は0.3%押し上げられたと推計される。
0.3%という押し上げ効果は、消費税率引き上げ時と比べるとかなり小さい。しかし、消費の低迷が続いている中では無視できる数字とはいえないだろう。
2.4 月以降に現れる反動減
今後懸念されるのは、駆け込み需要の反動減が4 月以降に現れることである。駆け込み需要は、4月以降に購入するはずだったものを、前倒しで購入したということなので4 月以降はその分の購入が手控えられることになる。
反動減による前期比ベースのマイナスの影響は、駆け込み需要によるプラスよりも大きくなる。たとえば、毎期10 万円の消費をする人が翌期に使うはずであった1 万円を前倒しで消費したとすると、その期の消費は前期比で10%の増加となる。翌期の消費は元の水準の10 万円に戻るだけではなく、さらに前倒しで消費した1万円を差し引いた9 万円となる。そのため、前期比では▲18%(▲2 万円/11 万円)と前期の増加率を上回る減少率となってしまうのである。
反動減による前期比ベースのマイナスの影響は、駆け込み需要によるプラスよりも大きくなる。たとえば、毎期10 万円の消費をする人が翌期に使うはずであった1 万円を前倒しで消費したとすると、その期の消費は前期比で10%の増加となる。翌期の消費は元の水準の10 万円に戻るだけではなく、さらに前倒しで消費した1万円を差し引いた9 万円となる。そのため、前期比では▲18%(▲2 万円/11 万円)と前期の増加率を上回る減少率となってしまうのである。
家電4 品目の反動減によるマイナスの影響は4-6 月期に最も多く現れ、民間消費を0.5%押し下げるだけのインパクトを持つと考えられる。
消費の基調が弱い中では0.5%のマイナスの影響はかなり大きい。1-3 月期は比較的堅調推移した消費だが、4-6 月期にはマイナスとなる可能性が高いだろう。
消費の基調が弱い中では0.5%のマイナスの影響はかなり大きい。1-3 月期は比較的堅調推移した消費だが、4-6 月期にはマイナスとなる可能性が高いだろう。
(2001年06月04日「エコノミストの眼」)

03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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