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- 米国専門人材育成システムから得られるインプリケーション-金融業界を中心に- -金融業界を中心に-
1.
日本人には、国際的に通用する専門人材が少ないといわれる。たとえば多国籍企業で経営トップに上り詰める日本人は少なく、国際機関などでも日本人に対する評価は低い。本稿では、こうした背景につき日米比較等を通じて明らかにする。
2.
米国では専門人材を効率的に採用・流通・育成する仕組みが整っている。採用面ではプロフェッショナル・スクールからの専門人材の安定した供給、また流通面では大規模な専門人材の中途採用市場と転職インフラがある。また専門人材の効率的な活用のために、投資銀行などでは独自の人材管理手法を持つ。さらに専門人材が自分の商品価値の向上努力を通じた人的資本の蓄積メカニズムが米国社会にビルドインされているほか、インターンシップ、企業内大学、コミュニティ・カレッジといった諸制度も人的資本の向上に大きく寄与している。
3.
一方、日本では学部の新卒採用が数としては多く、専門人材の流通市場に関しては、サイズ、奥深さ、歴史、インフラの整備状況といった点で、米国に比べかなり開きがある。また社会的・文化的にも、日本ではスペシャリストよりゼネラリストが高く評価され、職種よりも帰属組織が重視されてきた。しかも日本ではキャリアマネジメントやスキル開発の概念が薄く、ローテーションの繰り返しは企業内の人的資本の十分な蓄積を妨げてきたうえ、専門人材マネジメントについても日本企業では専門人材を評価し処遇する制度や文化が十分とはいえない。さらに、日本の大学院は研究者養成が目的で、これまで高度専門人材の育成という視点が欠けていた。最近では大学院改革を経て、日本型プロフェッショナル・スクールも登場してきたものの、その多くは伝統的な研究大学院がベースとなっており、高度職業人の養成を徹底的に追求する米国型プロフェッショナル・スクールとの格差は大きいのが実態である。インターンシップに関しても、制度としては始まったが、社会システムとして根付いたとは言い難い。
4.
以上のような日米比較から得られるインプリケーションとしては、人事マネジメント手法の刷新(専門職制度・成果主義の導入、ローテーションの見直し、部門別給与の導入、成果主義・年俸制の導入、権限と責任の委譲等)や、専門人材の流通環境の改善(スキル開発やキャリア管理を通じたエンプロイヤビリティ向上、幅広い年齢や職種に対する求人の創出、企業年金のポータブル化等)、大学院制度の見直し(職業大学院の充実、授業場所・時間の柔軟化、教育の標準化、入学試験の公平化・暗記偏重からの脱却、インターンシップ制の導入等)などが挙げられよう。
郷 一尚
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