1998年03月25日

税制と設備投資 -法人税率引き下げとその効果-

竹中 平蔵

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1.
近年、日本型成長の源泉とも言える民間設備投資の活力が低下しており、これが需要・供給両面から経済全体の停滞感を強めている。また、日本の法人税率が主要先進国に比べて高いという事実もあることから、投資活性化のための法人税減税が注目されつつある。しかしながら、法人税変更の効果がどの程度なのか、十分な議論が行われているとは言い難い。
2.
そこで本論では、異なる三つの投資決定モデル(加速度=キャッシュフローモデル、新古典モデル、限界qモデル)を用いて、法人税率低下が設備投資にどのようなインパクトをもたらすか、計測を試みた。
3.
法人税率が10%ポイント引き下げは、設備投資を2.2%~3.7%程度引き上げると試算されるが、これは従来一般に考えられてきた効果に比べ、かなり低いものである。その背景には、リスクプレミアムの上昇による企業の主観的割引率の上昇、企業組織の硬直化による投資の「調整費用」上昇、などが考えられる。
4.
投資活性化のためには、単に税率を引き下げ資本コストを軽減するだけでは不十分である。企業にとって、長期の「期待成長率」を高めるため、1980年代の初頭にアメリカで行われた。「サプライ・サイド型減税」を実施することが必要と考えられる。

(1998年03月25日「ニッセイ基礎研所報」)

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