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社会保障の制度整備は、近代国家のほとんどすべてにおいて、常に政策論争の対象となってきた。しかしながら近年、世界中の多くの国で従来以上に、この社会保障をめぐる政策論争が活発化している。基本的な認識は、財政赤字の拡大が急速に進み、また人口の年令構成変化が見込まれているなかで、今日の制度(公的年金や医療・介護制度)がもはや完全に維持可能性を失っている、という点にある。
日本において、こうした社会保障改革は、他の先進工業国以上の緊急性と重要性をもっている。経済の悪化を反映して財政赤字の拡大が急速に進んでおり、人口構成の変化も他に例を見ないようなスピードで進む。またそもそも、経済の悪化自体が、現在の財政破綻状況とそこから来る将来の生活に対する先行き不安から生じた、という側面がある。政府と民間の役割分担の見直しとも絡み、経済再生の一環としての社会保障制度改革が、政策上新しい争点になろうとしている。
しかしながら、そもそも社会保障に絡む議論は細部の技術論が先行しがちで、その骨格が見えにくい傾向がある。年金や介護といった問題に、ある程度の技術議論が必要としても、より基本的な視点を踏まえた検討が不可欠であろうことは言うまでもない。そこで本論では、今日の社会保障問題の基本的な背景を検討する。そうすることによって、改革の基本的な方向を考えるヒントが得られると考える。
竹中 平蔵
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