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- 労働党政権下の英国 -金融市場に懸念材料はあるか-
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■見出し
・はしがき
・ブレア首相?
・労働党の経済実績
・労働党政権下の金融市場
・ニュー労働党
・結論
■introduction
英国では1997年5月までに次回の総選挙が実施されるはずである。現段階では、ジョン・メイジャー首相の率いる中道右派の保守政権が敗れ、トニー・ブレア氏の率いる中道左派の労働党政権に交替する可能性が高いように思える。
英国では、1979年の総選挙でジェームズ・カラハン氏がマーガレット・サッチャー女史に敗れたあと、労働党は久しく政権の座から遠ざかっている。1974年にハロルド・ウイルソン氏の下で選挙に勝利したこの最後の労働党政権は、財政的にも経済的にも指導力のない政権であったと一般にみなされている。つまり、事実上、労働組合が実権を握り、その後の反市場的な政策は、急激なインフレ率の上昇を招き、貿易収支および公共部門の赤字を急増させ、産業界に社会不安を広めてポンド資産の価値の暴落を引起こした。少なくとも金融市場一般がわれわれをそう信じさせてきた。ついに、政府はIMF(国際通貨基金)にその救済を求めざるを得ないという事態にまでたち至ったのだった。
この見方は、一部真実を伝えるものなのかもしれないし、あるいは、16年間にわたった保守政権の中で作られたものかもしれない。現在中心勢力になっている多くの、恐らくは大多数の金融市場参加者は、労働党政権下で直接活動した経験がなく、時間の経過とともにサッチャ一政権下では、反労働組合的かつ市場主義的雰囲気が支配的であったことから、認識と真実が乖離してしまったのかもしれない。
理由はなんであれ、現段階での次に登場するであろう政権予測は、金融市場にとり懸念材料になっている。市場は次回の総選挙での労働党の勝利を恐れているようにみえる。労働党政権が2年後にもたらす事態についての懸念はもちろんのことだが、現在の保守政権がこの可能性(労働党政権の実現)を阻止するために実行するかもしれない政策を恐れている。例えば、財政的に無責任な減税などである。この懸念は、弱含みの通貨とは対照的な英国の驚異的な経済パフォーマンスという、現在の明らかに矛盾した事態を一部説明するものになっているのかもしれない。
本論では、1974年から1979年の間の労働党政権の実績を詳しく検討する前に、労働党が次の政権を樹立できるかどうかの見通しを簡単に述べる。さらに、過去の実績を検討したあとに、現在に至る労働党の政策の変化を検討する。これにより、現在の金融市場の懸念が当を得たものなのかどうかが明らかになるはずである。
(1995年07月01日「調査月報」)
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