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■要旨
賃金(一人当たり現金給与総額)は、国内景気の悪化を背景に企業の人件費抑制姿勢が高まったことなどから1997年をピークに緩やかな減少傾向が続いている。2014年の現金給与総額は前年比0.8%と2010年以来4年ぶりに増加したものの、1997年のピーク時(36.0万円)注1と比較すると、▲12.1%低い水準(31.7万円)にある。1990年代半ば以降の現金給与総額減少の要因は、所定内給与の減少(4割)と特別給与の減少(6割)に起因するものだ。
2014年の所定内給与は1997年よりも▲7.4%低いが、雇用形態別にみると一般労働者が1.5%、パートタイム労働者が4.3%といずれも増加している。それにもかかわらず、労働者全体の賃金水準が大きく下がっているのは、パートタイム比率が1997年の15.6%から2014年の29.8%までおよそ2倍に上昇しているためだ。
特別給与は、業績連動の部分が多いため、経常利益に半年から1年程度遅れて反映される傾向がある。しかし、長い目でみれば、経常利益(1990年:36.7兆円→2014年:65.8兆円)は水準を上げているのに対し、特別給与(1990年:8.0万円→2014年:5.6万円)は右肩下がりで推移し、企業収益が十分に還元されていない状況が続いている。
このように、1990年代半ば以降労働者全体の平均賃金が減少している背景には、長引くデフレ下で企業が収益確保の手段として、賞与等の特別給与を削減するとともにパートタイム労働者を増やしたことが挙げられる。景気が緩やかに回復するもとで企業の人手不足への危機感が高まっているが、人件費抑制姿勢は根強いためパートタイム比率の上昇傾向は今後も続くとみられる。労働者全体の平均賃金を引き上げるためには、パートタイム労働者の賃金水準を引き上げることが不可欠であり、この春闘では一般労働者だけでなく、パートタイム労働者の待遇改善も同レベルで議論する必要があるだろう。
岡 圭佑
研究・専門分野
(2015年03月16日「基礎研レター」)
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