2017年08月07日

【インドネシア4-6月期GDP】前年同期比5.01%増~2期連続の5%成長も、力強さに欠ける展開

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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インドネシアの2017年4-6月期の実質GDP成長率1は前年同期比(原系列)5.01%増と、前期(同5.01%増)から横ばいとなり、市場予想2の同5.08%増を若干下回った。
需要項目別に見ると、投資が回復する一方、政府消費と純輸出が鈍化した(図表1)。

民間消費(対家計民間非営利団体含む)は前年同期比5.02%増(前期:同5.00%増)と、安定した伸びを維持した。食料・飲料とホテル・レストランが堅調に推移する一方、アパレルや家庭用機器が伸び悩んだ。

政府消費は前年同期比1.93%減(前期:同2.68%増)となり、前年同期が予算執行の加速で高水準だったことから再びマイナスに転じた。

総固定資本形成は前年同期比5.35%増と、前期の同4.78%増から上昇した。機械・設備が2期ぶりのマイナスとなったものの、建設投資が2期連続で上昇したほか、自動車の大幅増加が続いたことが投資全体を押し上げた。

外需については、輸出が前年同期比3.36%増(前期:同8.21%増)と低下した。輸出の内訳を見ると、財輸出が同3.33%増(前期:8.41%増)となり、石油ガスおよび非石油・ガスが揃って低下したほか、サービス輸出も同3.59%増(前期:6.62%増)と低下した。一方、輸入も同0.55%増(前期:同5.12%増)と低下した結果、外需の成長率への寄与度は+0.60%ポイントと、前期の+0.75%ポイントから縮小した。
(図表1)インドネシア実質GDP成長率(需要側)/(図表2)インドネシア 実質GDP成長率(供給側)
供給項目別に見ると、第二次産業が上昇した一方、第三次産業と第一次産業が低下した(図表2)。

第二次産業は同3.92%増(前期:同3.55%増)と上昇した。内訳を見ると、製造業が同3.54%増(前期:同4.24%増)と低下したものの、鉱業が前年同期比2.24%増(前期:同0.64%減)、建設業が同6.96%増(前期:同5.95%増)とそれぞれ上昇した。

第三次産業は同5.21%増(前期:同5.50%増)と低下した。内訳を見ると、構成割合の大きい卸売・小売が同3.78%増(前期:同4.96%増)、金融・保険が同5.94%増(前期:同5.99%増)、行政・国防が同0.03%減(前期:同0.22%増)と低下した。一方、情報・通信は同10.88%増(前期:同9.13%増)、運輸・倉庫は同8.37%増(前期:同8.03%増)、ビジネスサービスは同8.14%増(前期:同6.80%増)、ホテル・レストランは同5.07%増(前期:同4.68%増)、不動産は前年同期比3.86%増(前期:同3.67%増)と、それぞれ上昇した。

第一次産業は同3.33%増(前期:同7.12%増)となり、農業生産がエルニーニョ現象の反動で大きく上昇した前期から低下した。
 
 
1 8月7日、インドネシア統計局(BPS)が2017年4-6月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査

4-6月期GDPの評価と今後の見通し

4-6月期の成長率は2期連続で5%成長となり、インドネシア経済は底堅く推移しているものの、明確な回復傾向は見られず、ぬるま湯状態が続く結果となった。民間消費の安定成長は変わらないものの、回復の遅れていた民間投資が上昇する一方、前期の成長率を押し上げた政府消費と輸出が低下した。インドネシア経済はこのように牽引役が入れ替わりながら、5%成長を続けている状況だ。

経済の先行きを考えると、短期的には消費が鈍化して景気の重石となりそうだ。インドネシアでは例年、イスラム教の断食月(ラマダン)と断食明け大祭(レバラン)にかけては企業が従業員に対して支給する特別手当などから国内の消費需要は1年で最も高まる傾向がある。今年のレバランの開催時期は昨年の7月上旬から6月下旬に早まったため、7-9月期は消費が落ち込む可能性が高そうだ。さらに消費需要の基調の弱さも懸念される。6月は食品価格とコアインフレ率が過去平均を下回る伸び率(前月比)となった。食品価格には政府の物価抑制策や農業生産の拡大も影響しているものの、コアインフレ率の低下傾向は国内需要の弱さの表われと考えられる(図表3)。

しかし、全体として景気は徐々に上向くものと見ている。4-6月期の輸出はレバラン前後の休暇によって6月の営業日数が少なかったために鈍化したものの、中国経済は底堅く推移しており、石炭やパーム油、ゴムなどの資源関連製品を中心に輸出の増加傾向は続きそうだ(図表4)。また輸出の拡大が続くなかで投資も堅調な伸びを維持しよう。中央銀行は7月から預金準備率のルールを緩和3して資金の流動性が高まったことから、銀行貸出は増加する可能性がある。また5月には米格付け大手S&Pがインドネシアの長期債格付けを投機的水準の「ダブルBプラス」から投資適格級の「トリプルBマイナス」に引き上げるなど、インドネシアの先行きを楽観視する向きがあることも投資の追い風となりそうだ。

政府支出は税収不足を背景として4-6月期に再び減少したものの、政府は7月に公表した補正予算案において財政赤字(GDP)を当初予算の2.4%から2.9%に拡大させるとし、景気の下支えを図る公算だ。また昨年後半は歳出が落ち込んでいただけに、今年後半の政府支出は増加傾向を続ける可能性が高いと考えられる。

以上のとおり、消費には陰りが見えるものの、輸出の拡大と投資の復調が続くだろう。景気の牽引役は入れ替わりながらも、成長率は現行の5%から小幅に上昇するだろう。
(図表3)インドネシアのインフレ率と政策金利/(図表4)インドネシア輸出の伸び率(品目別)
 
3 商業銀行が中央銀行に預ける預金準備率はこれまで預金残高の6.5%以上とされてきたが、17年7月以降は毎日預金残高の5%以上を預けている限り、2週間の平均値で現行の6.5%を上回ればよいとする柔軟なルールに変更した。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2017年08月07日「経済・金融フラッシュ」)

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