コラム
2017年05月16日

少子化対策に欠ける視点-“チルドレン・ファースト”の「子ども政策」を!

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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今年も総務省が統計トピックス『我が国のこどもの数~「こどもの日」にちなんで~』を公表した。2017年4月1日現在の子どもの数(15歳未満人口)は、1,571万人と1982年から36年連続の減少だ。都道府県別では東京都の子ども数だけが前年に比べて増加した。男女別では男子が805万人、女子が767万人、男子が女子より38万人多い。子どもの人口性比(女性100人に対する男性の数)は105.0と、社会全体の高齢化が進むなかで、総人口の人口性比94.8とは対照的である。

2017年の子どもの割合は12.4%と1975年から43年連続の低下だ。1997年に子どもの割合が65歳以上の老年人口割合を初めて下回り、現在の子どもの数は高齢者の数の半分を大きく割り込んでいる。都道府県別の子どもの割合は、沖縄県が17.2%と最も高く、秋田県が10.3%と最も低い。東京都は11.3%で全国平均を下回る。各国別の子どもの割合をみると、日本は最も低い水準にあり、世界一の高齢化国であると同時に、世界一の少子化国でもあるのだ。

このような状況を踏まえると、日本の少子化対策が急務であることは明白だ。主要な少子化要因は婚姻率の低下や夫婦一組あたりの出生数の減少と考えられ、出生数の回復に向けたさまざまな対策が取られてきた。しかし、これまでの少子化対策は、子どもの数を増やす施策に重点が置かれ、子どもの「生活の質」の向上という“チルドレン・ファースト”の視点が希薄だったのではないか。本来の少子化対策とは、子どもを政策対象の中心に据えた子どもにとって良好な生育環境をつくることだろう。

少子化が進むことで、子どもは学校などで集団行動を学ぶ機会が少なくなった。一人っ子が増え、家庭における小さな異年齢社会の経験も乏しい。親の過剰な関与や過保護が子どもの自立を阻害し、親の期待に重圧を感じる子どももいるだろう。また、経済的に不安定な非正規雇用の若年層が増加し、子どものいる世帯の「相対的貧困率」が高まっている。児童虐待も広がりを見せるなど、日本の子どもたちを取り巻く環境は決して恵まれた状況にあるとは言えない。

高齢化対策は高齢者の「生活の質」の向上のために社会保障制度等の充実を図るもので、その制度を破綻させないために高齢者の数を云々ということはない。経済成長や社会保障制度を維持するために子どもの数を増やすことに偏重した施策は、政策の優先順位の主客転倒だ。“チルドレン・ファースト”の「子ども政策」の推進が、子どもを産むことを希望する人や、子育ての喜びを享受する人を増やし、多くの子どもであふれる活力ある社会を実現することにつながるのではないだろうか。
 
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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2017年05月16日「研究員の眼」)

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