2017年04月11日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(4月号)~輸出は4ヵ月連続の二桁増を記録

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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17年2月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て通関ベース)は前年同月比12.7%増と、前月の同12.5%増から小幅に上昇した(図表1)。輸出は16年初から原油価格の底打ちで緩やかに持ち直しに向かい、年後半には一次産品の価格上昇や半導体需要の増加を受けて一段と加速し、現在4ヵ月連続の二桁増を記録している。先行きの輸出は短期的には高水準を維持するだろうが、これまでの価格の上昇要因が剥落するなか、伸び率が一桁台まで鈍化していくものと予想する。

なお、ASEAN5カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、東アジア・東南アジア向けと欧州向けが順調に回復する一方、米国向けが昨年後半から伸び悩む傾向が見られる(図表2)。
(図表1)ASEAN6ヵ国輸出動向(国別寄与度)/(図表2)ASEAN5ヵ国仕向け地別の輸出動向
タイの17年2月の輸出額は前年同月比2.8%減と、前月の同8.8%増から低下し、3ヵ月ぶりのマイナスとなった。2月の輸出の落ち込みは金が前年の急増からの反動減となった影響が大きく、一時的なものと見られる。このように輸出の伸びは上下に大きな振れを伴いながら、16年から資源価格の上昇を受けて緩やかに持ち直しており、足元では半導体需要の増加や中国向けのゴム製品やコメの輸出増などを受けて回復基調が鮮明になっている。一方、輸入額は前年同月比20.4%増と、前月の同5.2%増から大きく上昇した。結果、貿易収支は16.1億ドルの黒字となり、前月から7.8億ドル黒字が拡大した(図表3)。

輸出を品目別に見ると、全体の約8割を占める主要工業製品は同5.9%減と、前月の同8.8%増から大きく低下した(図表4)。工業製品の内訳を見ると、家電製品(同11.0%増)と電子機器(同9.7%増)が高い伸びを維持し、機械・装置(同3.4%増)も回復したものの、主力の自動車・部品(同1.3%減)や石油化学製品(同1.5%増)が低下し、また金(同65.3%減)が高水準を記録した昨年2月からの反動で落ち込んだ。一方、農産品・加工品は同10.1%増(前月:同2.1%増)と、ゴム(同75.3%増)とゴム製品(46.9%増)の好調やコメ(同6.1%増)の回復を受けて上昇した。さらに、鉱業・燃料も同28.9%増(前月:同49.9%増)と伸び率こそ低下したものの、石油製品を中心に二桁増が続いている。
(図表3)タイの貿易収支/(図表4)タイ輸出の伸び率(品目別)
マレーシアの17年2月の輸出額は前年同月比19.1%増と、前月の同10.6%増から上昇し、2ヵ月連続の二桁増を記録した。輸出の伸び率は16年初に資源価格が上昇に転じてから持ち直し、16年後半には主力の電気電子製品も増加に転じ、回復基調が鮮明になっている。一方、輸入額は前年同月比20.2%増と、前月の同13.0%増から上昇した。結果、貿易収支は19.6億ドルの黒字と、前月から9.6億ドル黒字が拡大した(図表5)。

輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同13.7%増(前月:同6.2%増)と主力の電気・電子製品(同15.2%増)を中心に上昇した(図表6)。また動植物性油脂は同52.2%増(前月:同18.5%増)と、価格が上昇したパーム油・同製品(同53.1%増)を中心に上昇し、4ヵ月連続の二桁増となった。一方、鉱物性燃料は同25.7%増と価格上昇に加えて数量ベースでも拡大しており高い伸びが続いているが、伸び率は前月の同41.4%増から低下した。また製造品も同3.6%増(前月:同3.9%増)と若干低下した。
(図表5)マレーシア貿易収支/(図表6)マレーシア輸出の伸び率(品目別)
インドネシアの17年2月の輸出額は前年同月比11.2%増と、前月の同27.9%増から低下したものの、高水準を維持した。輸出は16年初の原油価格の底打ちを受けて緩やかに持ち直し、年後半には数量ベースでも増加に転じた。さらに年末には一次産品価格が一段と上昇し、輸出の伸びは4ヵ月連続の二桁増が続いている。一方、輸入額も前年同月比10.6%増と、前月の同14.3%増から低下したが、高水準の伸びを維持した。結果、貿易収支は13.2億ドルの黒字と、前月から1.1億ドル黒字が縮小した(図表7)。

輸出を品目別に見ると、まず石油ガスが同7.6%増(前月:同14.8%減)と低下したものの、2ヵ月連続のプラスを維持した(図表8)。次に非石油ガスを見ると、輸出全体の7割を占める製造品は同12.2%増と、パーム油が好調だったものの、前年の急増した宝飾品の反動減の影響で前月の同26.3%増から低下した。また鉱業品も同5.5%増(前月:同50.4%増)と、鉱石・スラグを中心に一桁台まで低下した。一方、農産品は同30.5%増と、前月の同11.6%増から一段と上昇した。
(図表7)インドネシアの貿易収支/(図表8)インドネシア輸出の伸び率(品目別)
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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