2017年04月03日

日銀短観(3月調査)~景況感は幅広く改善したが、先行きへの警戒感は強い

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 日銀短観3月調査では、注目度の高い大企業製造業の業況判断D.I.が12と前回12月調査比で2ポイント上昇し、2四半期連続で景況感の改善が示された。大企業非製造業の業況判断D.I.も20と前回比2ポイント上昇し、6四半期ぶりに改善した。製造業では輸出の回復や円安の持続を受けて景況感が改善した。非製造業も消費の持ち直しのほか、16年度第2次補正予算の執行や大都市圏での再開発を受けた建設需要などが、景況感の改善に繋がった。ただし、円安・資源価格高止まりに伴う仕入コスト上昇などが景況感の抑制に働いたとみられる。中小企業も大企業同様、製造業・非製造業ともに改善が示された。
     
  2. 先行きについては、幅広く悪化が示された。トランプ米大統領の政策運営、欧州の政治リスクなど、海外情勢は不透明感が強い。国内でも消費の加速が見込みづらいほか、一部業種で人手不足に対する懸念が表面化していることが影響したとみられる。
     
  3. 16年度の設備投資計画は、前年度比0.4%増と下方修正された。例年、3 月調査にかけては上方修正されやすいクセがあるが、今回は大企業で大幅な下方修正が入った。今回から新たに公表された17年度の設備投資計画は、16年度計画比で▲1.3%となった。例年3月調査の段階では前年割れでスタートする傾向が極めて強いため、近年の3月調査との比較が重要になる。今回の伸び率は近年をかなり上回る。一部16年度から先送りされた分が17年度計画に加算された面もあるとみられるが、それを考慮しても強めであることには変わりない。生産の回復や人手不足等が計画の追い風になっている可能性が高い。ただし、海外を巡る先行き不透明感はかなり強いことから、海外動向が今後の設備投資の大きなカギになってきそうだ。
足元の業況判断DIは製造業、非製造業ともに改善(大企業)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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