2017年02月10日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(2月号)~2ヵ月連続の二桁増を記録

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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ベトナムの16年12月の輸出額は前年同月比16.9%増(前月:同16.3%増)と更に上昇し、2ヵ月連続の二桁増となった。輸出の伸び率は昨春に政府目標(前年比10%増)を下回る時期もあったが、年後半は主力の電気・電子製品を中心に勢いを取り戻している。一方、輸入額は前年同月比14.4%増と、前月の同19.6%増から低下した。結果、貿易収支は3.0億ドルの赤字(前月から0.5億ドル減少)と、2ヵ月ぶりの赤字となった(図表9)。

輸出を品目別に見ると、輸出全体の約2割を占める電話・部品が同67.9%増(前月:同17.6%増)と大きく上昇した(図表10)。またコンピュータ・電子部品も同37.8%増(前月:同25.5%増)と上昇した。一方、織物・衣類は同9.0%減(前月:同11.6%増)、履物は同3.2%増(前月:同10.6%増)とそれぞれ低下した。なお、食品はコメ(同17.8%減)が引き続き大きく減少した一方、コーヒー(同27.4%増)、野菜(同28.9%増)、ゴム(同33.6%増)など増加した品目が多かった。 輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同25.2%増(前月:同18.8%増)と一段と上昇する一方、地場企業が同0.8%増(前月:同10.3%減)と大きく低下した。
(図表9)ベトナムの貿易収支/(図表10)ベトナム輸出の伸び率(品目別)
シンガポールの16年12月の輸出額(石油と再輸出除く)は前年同月比7.3%増と、前月の同11.8%増から低下したものの、高めの水準を維持して2ヵ月連続のプラスとなった。16年以降、輸出の伸びは医薬品の変動が大きいために上下に振れているものの、基調としては底入れの動きが続いている。なお、総輸出額は前年同月比7.4%増(前月:同8.4%増)、総輸入額は同8.1%増(前月:同9.7%増)と、それぞれ高い水準を維持した。結果、貿易収支は37.8億ドルの黒字と、前月から2.9億ドル黒字が拡大した(図表11)。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品は同3.6%増と、前月の同3.7%増から横ばいとなった(図表12)。電子製品の内訳を見ると、通信機器(同38.0%減)やPC(同13.5%減)、ダイオード・トランジスタ(同11.5%減)こそ減少しているものの、IC(同27.4%増)やPC部品(同2.9%増)は増加するなど品目毎にバラつきがみられる。また電子製品と同じく全体の約3割を占める化学製品は同17.5%増と、前月の同24.1%増から低下したものの、2ヵ月連続の二桁増となった。化学製品の内訳を見ると、医薬品が同5.3%増(前月:同45.2%増)と鈍化した一方、石油化学製品が同26.1%増(前月:同14.2%増)と一段と上昇した。このほか、その他製品は同4.2%増(前月:同9.9%増)と伸び悩んだ。
(図表11)シンガポール貿易収支/(図表12)シンガポール輸出の伸び率(品目別)
フィリピンの16年12月の輸出額は前年同月比4.5%増(前月:同7.5%減)と上昇し、2ヵ月ぶりのプラスに転じた。輸出額は16年から緩やかに持ち直し、足元では主力の電子製品に息切れ感が出ているものの、一次産品が大きく伸びて増加傾向を維持している。一方、輸入額は前年同月比19.1%増と、前月の同19.7%増から小幅に低下したものの、力強い内需を背景に二桁増を維持した。結果、貿易収支は25.6億ドルの赤字と、前月から横ばいとなった(図表13)。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の約5割を占める電子製品は同2.8%減(前月:同7.9%減)から上昇したものの、2ヵ月連続のマイナスとなった(図表14)。電子製品の内訳を見ると、半導体デバイス(同1.9%増)や消費者向け電気製品(同8.0%増)は増加した一方、電子データ処理機(同12.9%減)とオフィス機器(同1.6%減)が減少となった。その他9品目を見ると、ココナツ油(同146.5%増)とその他鉱産物(同104.5%増)、金属部品(同66.4%増)、化学(同42.1%増)、その他製造品(同35.8%増)が増加した一方、イグニッション・ワイヤーセット(同37.8%減)と木工品・家具(同19.2%減)、機械・輸送用機器(同12.9%減)、アパレル(同4.2%減)が減少した。
(図表13)フィリピンの貿易収支/(図表14)フィリピン 輸出の伸び率(品目別)
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2017年02月10日「経済・金融フラッシュ」)

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