2016年11月10日

景気ウォッチャー調査(16年10月)~持ち直しの動きが明確だが、トランプ大統領誕生で先行きは不透明

経済研究部 研究員   岡 圭佑

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景気の現状判断DI

1.景気の現状判断DI(季節調整値):4ヵ月ぶりの改善、持ち直しの動きが明確に

11月9日に内閣府から公表された16年10月の景気ウォッチャー調査注1によると、景気の現状判断DI(季節調整値)は49.3(前月差+3.0ポイント)と4ヵ月連続で改善し年初来の高水準となった。景況感は4‐6月期こそ弱含んだものの、世界同時株安や英国のEU離脱等による落ち込みを取り戻しており、緩やかな回復基調が続いていると考えられる。なお、内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直している」へ上方修正した。

前回調査では、台風等による天候不順や残暑の影響で小売関連を中心に景況感の悪化がみられた。今回調査においても天候不順のコメントは依然多かったが、気温の低下に伴い秋冬物商材が好調であったことや円高の進行に一旦歯止めがかかったことが、景況感の改善につながった模様である。なお、今回の調査は10月25日から月末に実施されているため、トランプ大統領誕生の結果は織り込まれていない点に留意が必要だ。

コメントをみると、英国のEU離脱関連や円高・株安関連のコメントは英国のEU離脱が決定した6月をピークに減少しているほか、熊本地震関連は復旧対応の進展とともに急減するなど、マインド面の下押し圧力は和らいでいるとみられる(最終頁の図参照)。一方、円高などを受けた物価下落や消費者の節約志向を理由にデフレを懸念する声は依然根強いようだ。
 
注1 内閣府は、今回から調査結果の動向判断を原系列から季節調整系列に変更したため、本レポートでも季節調整値を中心に記述することとした

2.気温の低下で家計の景況感は改善

現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連(前月比+3.0ポイント)、企業動向関連(同+1.8ポイント)、雇用関連(同+3.0ポイント)といずれも前月から改善した。家計動向関連では、住宅関連(前月差▲1.2ポイント)を除き、小売関連(同+4.8ポイント)、飲食関連(同+1.4ポイント)、サービス関連(同+2.3ポイント)が改善した。
 
コメントをみると、家計動向関連のうち小売関連では「10月に入り、前年と比べ気温の低下が早く、秋冬物の需要が高まり、来客数が増加している」(南関東・衣料品専門店)といったように、気温の低下に伴い秋冬物商材が好調であったことが景況感の押し上げに働いた模様である。また、インバウンドの減速が鮮明な百貨店でも、「気温の低下で、秋物商材の動きが非常に好調である。インバウンドの落ち込みも、幾分緩和している」(東海・百貨店)など気温の低さが下支えとなったようだ。一方、生鮮食品の価格高騰、消費者の生活防衛傾向や節約志向を指摘する声は依然として多い。

住宅関連では、「新築マンション、戸建住宅共に、販売センターの集落が落ちているほか、来場しても契約に至る割合が低下している」(北陸・住宅販売会社)など客足の減少を指摘するコメントや「3か月前と大きく変わっていないが、投資向けの新築アパートはピーク感がある。契約数も若干ではあるが鈍化傾向にあり、緩やかに下がってきている」(南関東・住宅販売会社)といったように、賃貸住宅市場における過熱感を懸念するコメントも寄せられた。

業動向関連は、製造業(前月差+1.8ポイント)、非製造業(同+1.7ポイント)ともに前月から改善した。コメントをみると、製造業では「一時期と比べやや円安傾向となっていることで、先行きに対する不安感がやや緩和されている」(北海道・家具製造業)など円高の進行に歯止めがかかったことを指摘するコメントが寄せられた。このほか、「自動車メーカーの北米輸出の増加と国内販売が好調なため、生産が増加している」(南関東・輸送用機械器具製造業)や「海外向けの自動車部品関連が好調に動いており、このまま12月まで続きそうである」(近畿・金属製造業)など外需の持ち直しを示唆するコメントもみられた。

雇用関連では、「正社員求人が増加傾向にある。市場に人材が不足しているため、転職者を獲得しようとする企業が増えている」(北海道・求人情報誌製作会社)といったように、引き続き人手不足感の強まりを示唆するコメントが多く寄せられた。
景気の現状判断DI(分野別、季節調整値)/小売関連(原数値)の要因分解
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経済研究部   研究員

岡 圭佑 (おか けいすけ)

研究・専門分野
日本経済

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