2016年09月09日

【東南アジア経済】ASEANの輸出動向(9月号)~急低下で底打ちが見通せない展開に

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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16年7月のASEAN主要6カ国の輸出(通関ベース)は前年同月比7.8%減と、低調な海外需要と農産物や原油・ガスなどの価格低迷が重石となって前月の同2.3%減から低下した(図表1)。輸出の減少幅は年明けから顕著に縮小してきたものの、ベトナムを除く5ヵ国が7月に揃って急落したことで年内の底打ちは見通しにくくなった。8月の中国の輸入額が前年同月比1.5%増とプラスに転じ、この7月のASEANの輸出の下振れは一時的なものとなる可能性もあるが、先行きの輸出動向を慎重に見ていく必要がありそうだ。
(図表1)ASEAN6ヵ国合計の輸出の伸び率(国別寄与度)/(図表2)ASEAN6ヵ国輸出の伸び率
(図表3)タイ輸出の伸び率(品目別) タイの16年7月の輸出額は前年同月比6.4%減(前月:同0.1%減)と、前月に好調だった自動車輸出が急落して低下した(図表3)。輸出数量指数も同4.8%減(前月:同2.3%増)と低下した。

品目別に見ると、主要工業製品は同3.1%減(前月:同3.1%増)と2ヵ月ぶりのマイナスとなった。自動車・部品(同16.9%減)をはじめ、電子製品・部品(同3.8%減)、電子製品(同2.4%減)、機械・装置(同6.7%減)など幅広い品目で低下した。また農産品・加工品も同14.2%減(前月:同2.7%減)と、コメ(同35.1%減)やゴム(同34.8%減)、砂糖(同33.0%減)、魚の缶詰(同7.4%減)を中心に大きく低下した。鉱業・燃料(同31.1%減)は引き続き大幅なマイナスを記録した。
(図表4)マレーシア輸出の伸び率(品目別) マレーシアの16年7月の輸出額は前年同月比5.3%減(ドルベースでは同10.4%減)と、前月の同3.4%増からマイナスに転じた(図表4)。石油・ガスの輸出の落ち込みは和らぎつつあるものの、これまで堅調に増加していた機械類が減少したことが全体を押下げた。また輸出数量指数についても同2.0%減と、前月の同7.4%増から2ヵ月ぶりのマイナスとなった。

品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器が同5.2%減(前月:同5.4%増)と、電気・電子製品や通信・音響機器を中心に大きく低下し、15ヵ月ぶりのマイナスとなった。また鉱物性燃料は同9.4%減(前月:同2.6%減)と、原油や天然ガスこそ上昇しているものの、石油製品を中心に低下した。このほか動植物性油脂は同6.1%減(前月:19.3%減)と、パーム油を中心にマイナス幅が縮小した。
(図表5)インドネシア輸出の伸び率(品目別) インドネシアの16年7月の輸出額は前年同月比17.0%減(前月:同4.0%減)とマイナス幅が拡大した(図表5)。鈍い海外需要と資源の価格低迷に7月上旬のレバラン(断食明け大祭)で営業日数が少なかったことが重なり、輸出が大きく下振れた。また輸出数量は同5.9%減(前月:同9.3%増)と、再びマイナスに転じた。

品目別に見ると、輸出全体のそれぞれ1割強を占める石油ガスが同29.8%減(前月:17.5%減)、鉱業製品が同25.4%減(前月:同26.9%減)と、引き続き全体の重石となっている。また農産品が同39.5%減(前月:13.2%減)と低下し、製造品も同11.5%減(前月:同1.9%減)と機械類や電気機械、アパレルを中心に低下した。
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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