2016年09月09日

マネー統計(16年8月分)~不動産向け貸出が増加、消去法的な普通預金への資金流入が継続

経済研究部 シニアエコノミスト   上野 剛志

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1.貸出動向: 円高でますます目減り、実態は悪くない

日銀が9月8日に発表した貸出・預金動向(速報)によると、8月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.0%と前月(前年比2.1%)から低下した。小数点以下第2位まで計算すると1.98%で、異次元緩和導入前である2013年3月以来の2%割れということになる。業態別では、地銀は3.3%(前月も同じ)と横ばいで推移したが、都銀等が前年比0.5%(前月は0.7%)と低下し、マイナスに寄与した(図表1~2)。

銀行貸出の伸び率は低下ぎみだが、為替変動等の影響を調整した「特殊要因調整後」の伸び率(図表1)1は堅調に推移しており、直近判明分である7月の伸び率は前年比2.7%と4ヵ月連続で上昇している。円高の進行に伴って外貨建て貸出の円換算額が減少し、見た目の伸び率の押し下げに働いているためであるが、本来円高による円換算額の減少は貸出の実勢とは何ら関係がない。
(図表1) 銀行貸出残高の増減率/(図表2) 業態別の貸出残高増減率/(図表3) 銀行貸出とドル円レート(月次平均の前年比)/(図表4)業種別貸出の伸び率(前年比)
8月についても、ドル円レートの前年比が▲17.8%と6月(▲15.7%)からマイナス幅をやや広げており(図表3)、見た目の伸び率低下の一因になったと考えられる。

円高の影響を除いた貸出の実勢は、大きく勢いを増しているわけではないものの、見た目の伸び率のように低迷しているわけではない。
 
主な業種別の貸出動向(四半期ごとの統計、2016年6月末時点)を見ると、物品賃貸(前年比10.3%)を筆頭に、機械(9.9%)、鉄鋼(9.1%)、不動産(6.7%)向けの伸び率が高く、全体を牽引している。これらの業種は、マイナス金利政策導入前の2015年12月末と比較しても伸び率が高まっている。とりわけ、もともと残高が突出して多く、全体への影響が大きい不動産向けは、前年比で4.3兆円も増加、2015年12月(3.2兆円増)からも増勢が強まっている(図表4)。

マイナス金利導入等に伴う金利低下によって、大量のマネーが不動産へ向かった様子がうかがわれる。
(図表5)国内銀行の新規貸出金利 なお、7月の新規貸出金利については、短期(一年未満)が0.681%(6月は0.657%)、長期(1年以上)が0.778%(6月は0.822%)となった(図表5)。

マイナス金利導入以降、国債利回りほどではないものの、銀行貸出金利も低下しており、銀行収益の圧迫要因になっている。


 
 
1 特殊要因調整後の残高は、1カ月遅れで公表されるため、現在判明しているのは7月分まで。
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経済研究部   シニアエコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融、日本経済

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