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- 「カーナビ」時代の人生ドライブ-アナログ地図とデジタル地図
最近では、多くの車にカーナビが装着されている。どこに行くにも、目的地を入力し、ナビの指示通りに運転すれば、だれでも道をまちがえずに到着できる。行楽地から自宅へ帰るときも、最寄りの高速道路のインターチェンジ入口へ的確に誘導、首都高速道路のような複雑な路線も迷うことがない。ひとたびこの利便性を手に入れると、カーナビなしのドライブは不安になってしまう。
昔のドライブはアナログの道路地図が頼りだった。出発地から目的地までの道路の路線番号を調べ、運転中は道路標識を見落とさないように必死だった。だが、「カーナビ」時代のドライブは運転ルートはあまり関係がなく、単なる点と点をむすぶ移動手段に過ぎなくなった。その結果、ドライブ自体の楽しみは半減したような気がする。それは移動自体がひとつの目的である個人旅行が、移動が手段であるビジネス出張になったようなものかもしれない。
一方、カーナビの技術進歩は著しい。地図情報の自動更新はもちろん、カーナビでグーグルマップが使えるようになってきた。カーナビのデジタル地図は、運転ルートや渋滞情報の表示にとどまらず、周辺の施設情報や映像等も提供する巨大なデータベースと化している。さらに将来は人間に代わってAI(人工知能)による自動運転の可能性も広がり、その活用方法はますます重要になるだろう。
しかし、文書をワープロソフトで作成することが一般的になり、漢字が正確に書けなくなったのと同様に、カーナビに依存し過ぎると、自力での車の運転が難しくなるかもしれない。また、カーナビの画面は移動にともない地図自体がスクロールされる自分中心の“天動説”表示だ。常に小さな画面のなかで現在地を中心に表示されるので、情報が分断化され、全体像が見えにくくなる恐れもある。
膨大な情報にあふれた現代社会を生きるためには、主体的なデータ活用が求められる。前例のない長寿社会の人生ドライブにおいて、われわれは「ナビ機能」を巧く使いつつも、日々の経過や主体的な判断がとても大切だ。人生の途中のさまざまな出来事を楽しみながら幸せな最期を迎えるためには、「アナログ地図」を片手に、ベネチアのような魅力ある迷路の街歩きを楽しむことも忘れてはならない。
土堤内 昭雄
研究・専門分野
(2016年07月26日「研究員の眼」)
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