2016年07月11日

景気ウォッチャー調査(16年6月)~英国のEU離脱で景況感は悪化が鮮明に

経済研究部 研究員   岡 圭佑

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景気ウォッチャー調査 景気の現状判断(方向性)/景気の先行き判断(方向性)

1.景気の現状判断DI:3ヵ月連続の悪化、景況感は悪化が鮮明に

7月8日に内閣府から公表された16年6月の景気ウォッチャー調査によると、景気の現状判断DIは41.2.(前月:43.0)と3ヵ月連続の悪化となった。参考系列として公表されている季節調整値も39.9と前月から▲0.7ポイント悪化するなど、景況感は一段と悪化の傾向を強めている。

これまでインバウンド需要の下支えがあったものの、中国をはじめとした新興国経済の減速や株安・円高、熊本地震によるマインド面の下押しもあり景況感は停滞が続いていた。しかし、6月調査ではインバウンド需要による押し上げ効果が弱まるなか、英国EU離脱決定の下押し要因が加わったことで景況感は一段と悪化した。企業動向関連では、株安・円高の進行に加え、EU離脱決定に伴う世界景気の先行き不透明感から、幅広い業種で景況感が悪化した。家計動向関連では、株安・円高の進行で消費マインドが悪化したほか、円高がインバウンド消費の逆風となり百貨店を中心に弱さがみられる。

コメントをみると、新たな景況感の押し上げ材料が不在のなか、円高・株安関連のものをはじめ、熊本地震関連や英国のEU離脱関連など下押し材料は増加傾向にある(最終頁の図参照)。年初から下落を続けていた原油価格は持ち直し傾向にあるものの、急激な円高を根拠にデフレ懸念を警戒する声も一部の業種で聞かれた。

2.英国のEU離脱で企業・消費者マインドともに悪化

現状判断DIの内訳をみると、家計動向関連(前月差▲1.7ポイント)、企業動向関連(同▲1.5ポイント)、雇用関連(前月差▲3.3ポイント)いずれも前月から悪化した。家計動向関連のうち、サービス関連(前月差▲1.9ポイント)が最大の落ち込みとなり、次いで小売関連(同▲1.7ポイント)、住宅関連(同▲1.2ポイント)、飲食関連(同▲0.6ポイント)となった。
景気の現状判断DI(分野別、原数値)/小売関連の要因分解 コメントをみると、小売関連では、改善要因として「季節のせいもあるが、ボーナスが支給されたため、エアコンが売れ始めている」(南関東・一般小売店)といったように、ボーナスによる消費増を挙げるコメントが見受けられたほか、「気温の上昇とともに来客数が増加してきている」(北海道・コンビニ)など、気温上昇による夏物商品の好調を指摘するコメントが寄せられた。一方、「6月の予約が入る5月ごろに熊本地震報道の影響による自粛ムードがあり旅行需要が減少したことから、今年の6月の状況は悪い」(北関東・観光型旅館)とのコメントのように、引き続き熊本地震によるマインド面の下押しがみられるほか、「英国のEU離脱問題に伴う円高、株安により、客は財布のひもを更に引締めている」(北関東・商店街)など、英国のEU離脱決定後の円高・株安による消費マインドの悪化が大きく影響したことが窺える。また、6月は季節商品の需要が高まる時期であるが、「婦人・紳士服や、婦人・紳士雑貨の販売不振が続いているほか、6月から受注をスタートしたお中元ギフトの購買客数も伸び悩んでいる」(近畿・百貨店)のように、季節要因による盛り上がりもあまり確認できない。

そのほか、「英国のEU離脱問題により、円高、デフレ傾向になることが非常に懸念される」(南関東・スーパー)など、円高によるデフレを懸念する声も寄せられた。これまで小売関連の下支え役となっていたインバウンド需要については、「今月は売上が目標を下回る見込みである。従来は好調であったインバウンドや、高額品の動きが鈍くなってきている」(近畿・百貨店)など、インバウンド需要の鈍さを指摘するコメントが多く寄せられた。

飲食関連では、来客数が前年を下回っているとの声が多く寄せられたほか、「特別、景気が上向きになるような材料がない。英国のEU離脱問題の影響により、今後、円高が進むことが懸念されるなど、不安材料の方が多く、景気が上向きになる要素がない」(北海道・高級レストラン)など、円高によるマインド面の下押しを懸念するコメントも見受けられた。

住宅関連では、「マイナス金利の影響で住宅ローンの借り換えは増えているが、消費増税の延期で新規契約が伸び悩んでいる」(近畿・住宅販売会社)など、消費増税延期の影響を指摘するコメントが寄せられた。

業動向関連は、製造業(前月差▲0.9ポイント)、非製造業(同▲2.4ポイント)ともに前月から悪化した。コメントをみると、「英国のEU離脱問題の影響で円高となり輸出関連の繊維や機械などの出荷が減っている」(北陸・輸送業)や「英国のEU離脱問題の影響はまだ分からないものの、マインドが低下していることは間違いない」(中国・建設業)のように、製造業、非製造業ともにEU離脱の影響を懸念する声が多く聞かれた。

雇用関連は年初に入ってから悪化が続き、節目の50を3 ヵ月連続で割り込むなど改善の動きに一服感がみられる。コメントをみると、「新規求人数、有効求人数共にほぼ横ばいで推移しており、特別に大きな変化はみられていない」(東北・職業安定所)など雇用情勢の改善を指摘するコメントがみられる一方で、「このところ求人件数が前年、前々年の水準を下回ってきている」(北海道・求人情報誌製作会社)など求人件数の減少を指摘するコメントや「英国のEU離脱問題による影響で、やや悪くなっている」(南関東・学校)のように、EU離脱による雇用面への影響を懸念するコメントが散見された。
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経済研究部   研究員

岡 圭佑 (おか けいすけ)

研究・専門分野
日本経済

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