2016年03月24日

リスク・パリティによるスマートベータの合成

金融研究部 研究員   前山 裕亮

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■要旨

2013年ごろから投資家の間で徐々に注目され始め、2014年にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が採用したことで一段と注目度が高まったスマートベータ。2015年もスマートベータ型のETF(上場投信)3本が東京証券取引所に上場されるなど、プロ(機関投資家)だけでなく個人投資家にも、スマートベータはより身近なものになってきています。
 
スマートベータは市場を上回るパフォーマンスが期待できるものの、短期的にはパフォーマンスが安定しないことが知られています。スマートベータを活用する上で、パフォーマンスをいかに安定させるかが重要になります。
 
本稿では、スマートベータの活用方法として日本株式、外国株式のスマートベータを例に、その組み合わせ方(合成方法)を中心に考察したいと思います。

■目次

1――はじめに
2――スマートベータのパフォーマンス
  1|スマートベータとは
  2|安定感を欠くパフォーマンス
  3|年ごとにパフォーマンスは浮き沈みする
3――スマートベータの組み合わせ
  1|組み合わせによるパフォーマンスの安定化
  2|均等配分ではリスクが特定のスマートベータに偏る可能性
4――リスク・パリティ
  1|リスクを均等配分する組み合わせ方
  2|均等配分と比べてT.E.が低下し、I.R.は改善
5――おわりに

1――はじめに

1――はじめに

2013年ごろから投資家の間で徐々に注目され始め、2014年にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が採用したことで一段と注目度が高まったスマートベータ。2015年もスマートベータ型のETF(上場投信)3本が東京証券取引所に上場されるなど、プロ(機関投資家)だけでなく個人投資家にも、スマートベータはより身近なものになってきています。
スマートベータは市場を上回るパフォーマンスが期待できるものの、短期的にはパフォーマンスが安定しないことが知られています。スマートベータを活用する上で、パフォーマンスをいかに安定させるかが重要になります。そこで、本稿ではスマートベータの活用方法として日本株式、外国株式のスマートベータを例に、その組み合わせ方(合成方法)を中心に考察したいと思います。
 

2――スマートベータのパフォーマンス

2――スマートベータのパフォーマンス

1スマートベータとは
スマートベータとは株式指数の一種です。年金基金などでベンチマーク(パフォーマンスの基準)に用いられる時価総額加重型の株式指数とは異なり、株式市場で堅調なパフォーマンスが見込まれる銘柄の特徴(ファクターといいます)に着目した指数です。見込み違いではなく、ファクターが本当にスマートであれば、スマートベータは時価総額加重型の株式指数を上回るパフォーマンスが期待できます。また、スマートベータを活用した運用は指数の値動きを再現する単純明快な運用となるため、低コストで実現できることもスマートベータの魅力の一つです。
近年、機関投資家の間でアクティブ運用の代替として、スマートベータを活用する気運が高まっています。アクティブ運用とは、ベンチマークを上回ることを目指した通常の運用のことです。スマートベータへの関心が高まっている背景には、「アクティブ運用のパフォーマンスの大部分が、スマートベータを用いれば低コストで再現できる」との考えが出てきたことがあります。実際にノルウェー政府年金基金が採用したアクティブ運用の超過リターン(ベンチマークを上回った部分の収益)の7割が、一般的なファクターの効果によって説明できたとの報告もありました。
本稿では、6本の単一ファクター指数をスマートベータとして取り上げます【図表1】。MSCIから公表されている指数で、割安株、小型株、モメンタム株、低リスク株、高クオリティ株、高配当株のパフォーマンスを集約したものです。
【図表1】 本稿で取り上げる6本のファクター指数
2安定感を欠くパフォーマンス
6本のファクター指数のパフォーマンスを確認しましょう。日本株式は配当込みTOPIX、外国株式はMSCIコクサイをベンチマークとして、超過リターンでパフォーマンスを見ます。過去14年間通して見ると、多くのファクター指数がベンチマークを上回るリターンを日本株式、外国株式双方で上げていました【図表2】。
日本株式では、「バリュー」「等ウェイト」「低リスク」「高配当」の4指数が、配当込みTOPIXを上回るパフォーマンスを上げていました【図表2:左】。特に「バリュー」と「等ウェイト」は、比較的安定して右肩上がりのグラフでした。しかし、「バリュー」は2010年以降、低下傾向にあります。「等ウェイト」についても2005~2007年にかけては横ばい、もしくはやや軟調に推移していました。また、「モメンタム」「クオリティ」の2指数については、14年間通して見ると配当込みTOPIXを下回りました。「モメンタム」「クオリティ」ともリーマン・ショック後の2009年以降は、グラフは緩やかながら上昇に転じており、足元では超過リターンを獲得していました。
【図表2】累積超過リターンの推移
外国株式では、6本全てがMSCIコクサイを上回るリターンを上げていました【図表2:右】。ただ、全期間通して見ると超過リターンを獲得していましたが、どの指数もグラフの推移は大きく下落している期間があり、パフォーマンスは不安定でした。
日本株式、外国株式ともに、長期的に見ると超過リターンを獲得している指数はありましたが、安定して常にベンチマークを上回っていた指数はなかったことが分かります。
 
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金融研究部   研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
運用手法開発(国内株式)

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