2016年03月08日

福岡オフィス市場の現況と見通し(2016年)

金融研究部 不動産市場調査室長   竹内 一雅

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■はじめに

福岡のオフィス市場では、人口増加に伴う堅調な需要の増加とオフィスビルの新規供給の少なさから空室面積の減少が続いている。博多駅前での開発が進展しているが、天神明治通り地区でも高さ制限の緩和に伴う大規模ビルの建替えによる業務・商業機能のさらなる集積が期待される。本稿では福岡オフィス市場の現況把握とともに2022年までのオフィス賃料の将来予測を行う。

■目次

1. はじめに
2. 福岡のオフィス空室率・賃料動向
3. 福岡のオフィス需給と地区別動向
4. 福岡の新規供給計画・人口見通し
5. 福岡のオフィス賃料見通し
6. おわりに

1. はじめに

1. はじめに

福岡のオフィス市場では、人口増加に伴う堅調な需要の増加とオフィスビルの新規供給の少なさから空室面積の減少が続いている。博多駅前での開発が進展しているが、天神明治通り地区でも高さ制限の緩和に伴う大規模ビルの建替えによる業務・商業機能のさらなる集積が期待される。本稿では福岡オフィス市場の現況把握とともに2022年までのオフィス賃料の将来予測を行う1
 
1 過去のレポートを参照のこと。竹内一雅「福岡オフィス市場の現況と見通し(2015年)」(2015.3.10)ニッセイ基礎研究所、同「福岡オフィス市場の現況と見通し(2014年版)」(2014.3.10)ニッセイ基礎研究所など。
 

2. 福岡のオフィス空室率・賃料動向

2. 福岡のオフィス空室率・賃料動向

福岡市オフィス市場では市況の大幅な改善が続いている(図表-1)。三幸エステートによると、2010年には15%を上回っていた空室率が、2016年2月には5.85%まで改善してきた。3年前と比べた改善幅は▲6.53ポイント(以下ptとする)で、東京都区部(▲4.12pt)、札幌市(▲3.13pt)、仙台市(▲2.34pt)、名古屋市(▲4.30pt)、大阪市(▲1.91pt)を大きく上回っている。
空室率の改善に伴い、成約賃料も上昇傾向にある。三幸エステートと共同で開発したオフィスレント・インデックス(成約賃料指数)によると、新築ビルの供給があった2015年上期2には坪当たり賃料が前期比+20%の大幅な上昇となった(図表-2)。2015年下期には反動のためか前年とほぼ同程度まで低下したが、それでもリーマンショック後の底値(2012年下期)からの上昇率は+46.9%と主な政令指定都市の中で最も高い。
 
図表-1 主要都市のオフィス空室率/図表-2 主要都市のオフィス成約賃料(オフィスレント・インデックス)
規模別に見ても全ての規模で空室率の改善が進んでいる(図表-3)。2014年は小型ビルで空室率の改善が停滞したが、2015年は他の規模と同様に低下した。2016年2月の大規模ビルの空室率は3.56%、大型ビルは6.13%、中型ビルは9.21%、小型ビルは10.58%だった。
三鬼商事によると、2015年末の福岡ビジネス地区3の空室面積は4.4万坪で、ピークだった2009年(10.6万坪)の41.3%に改善した(図表-4)。空室面積の減少は、2009年以降の順調な賃貸面積の増加(2009年から+6.7万坪の増加)と同時に、新規供給が少なく賃貸可能面積が横ばいで推移(同+0.5万坪の増加)していることも大きな要因となっている。
 
図表-3 福岡の規模別空室率/図表-4 福岡ビジネス地区の賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積
 
2 2015年2月には、2015年で唯一の大規模ビル供給である長府博多ビジネスセンター(延床面積10,331㎡)の供給があった。
3 三鬼商事の定義による。福岡の主要6地区(赤坂・大名地区、天神地区、薬院・渡辺通地区、祇園・呉服町地区、 博多駅前地区、博多駅東・駅南地区)をいう。
 

3. 福岡のオフィス需給と地区別動向

3. 福岡のオフィス需給と地区別動向

福岡ビジネス地区では、新規供給が低水準で推移する一方で需要は着実に増加している。その結果、6年連続で空室面積は減少し空室は年平均約1万坪の減少となっている(図表-5左図)。月次でみても賃貸面積は着実な増加が、空室面積は着実な減少が続いている(図表-5右図)。直近では2015年11月から3ヶ月連続で賃貸面積の増加がほとんど見られないが、年末年始は需要が低下する時期であることに加え、全体的には、館内増床、拡張移転、新規進出、分室開設、郊外からの移転などが続いており、当面、懸念する状況にはならないと考えられる。
図表-5 福岡ビジネス地区の賃貸オフィス需給面積増加分
福岡では2014年と2015年の二年連続で大規模オフィスビルの竣工が一棟のみだったことと、旺盛な賃貸需要ため、賃貸面積増分のほとんどが既存ビルで吸収された(図表-6)。
2010年以降、福岡ビジネス地区内で空室率が上昇したのは、2011年末~2012年末の薬院・渡辺通地区だけであり4、それ以外は全地区で5年間に渡って空室率の改善が続いている(図表-7)。2015年の一年間の空室率の改善幅は、博多駅前地区の▲2.98pt(9.01%→6.03%)が最も大きく、次いで薬院・渡辺通地区の▲2.23pt(5.74%→3.51%)、祇園・呉服町地区の▲1.15pt(7.67%→6.52%)だった。
福岡ビジネス地区でオフィスビルの集積が進んでいるのが天神地区(構成比24.1%)と博多駅町前地区(同21.6%)で、これに続くのが祇園・呉服町地区(同16.1%)、博多駅東・駅南地区(同16.1%)である(図表-8)。2015年の一年間に福岡ビジネス地区で賃貸面積は+1.2万坪の増加だったが、このうち、博多駅前地区が+4.5千坪の増加で最も多く、新規供給のあった祇園・呉服町地区(+3.4千坪)や、薬院・渡辺通地区(+1.9千坪)が続いており、全地区で賃貸面積の増加と空室面積の減少がみられた(図表-9)。
 
図表-6 福岡ビジネス地区の新築・既存ビル別賃貸面積増分/図表-7 福岡ビジネス地区の地区別オフィス空室率推移/図表-8 福岡ビジネス地区の地区別賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積構成比/図表-9 福岡ビジネス地区の地区別オフィス需給面積増加分(2015年)
 
4 薬院・渡辺通地区で2011年末~2012年末に空室率が上昇したのは、2012年3月に大規模ビルの電気ビル共創館(延床面積3.8万㎡)が竣工しためである。
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金融研究部   不動産市場調査室長

竹内 一雅 (たけうち かずまさ)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

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