コラム
2014年09月30日

おひとりさまからシェアハウス~コンパクトシティにシェアハウス~

  薮内 哲

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ルームシェアとシェアハウス
   近年、ルームシェアとは一線を画したシェアハウスが住まいの形態の一つとして広がっている。日本でのシェアハウスの物件数と住戸数は、2013年の3月末時点で1,378物件、19,208戸とこの数年で年率3割増加しており、3年間で約2倍になっている

以前から家賃を安く抑えたいという目的を持った人々にはルームシェアが選択されていた。ルームシェアに対して最近のシェアハウスの特徴は、個人のプライベート空間が確保されていることに加えリビングやキッチンといった共有スペースには一般的な一人暮らしでは備えるには難しい豪華な家具や設備を提供している点である。例えば、広いキッチン設備やお洒落で大きめなソファ、そしてテレビゲームやホームシアターなどがあり、中にはボルダリング施設やお洒落なカフェの併設、ペットも可など、従来の居住空間にプラスアルファの工夫を施している。特に居住者の暮らし方や趣味にまで広げてコンセプトを造りこんでいるものは、「コンセプト型シェアハウス」と言われている。つまり、現在のシェアハウスは家賃を安く抑えたいというルームシェアが担ってきた従来の目的のみならず、共同生活の楽しみやより充実した生活を過ごすきっかけを得られるといった点に重点が置かれている。

では、実際にシェアハウスを居住先として選択した場合のメリット(魅力)は何だろうか。シェアハウス市場調査2013年度版の中で、シェアハウスに実際に住んでいる人が満足している点として挙げている最も多い回答は2つあり、「他の人と暮らすことによる楽しさや安心感が得られた」や「外国人や経歴の異なる人々と交流できる」となっている。新たな出会いをきっかけとしてビジネスパートナーに発展することや、交際相手が見つかるといった例もあるようだ。次いで「初期費用が安かったこと」、「家具・家電付きであること」など、費用を抑えることができるという回答も多い。

一方、同調査でシェアハウスのデメリットである入居後のトラブルについてみてみると、最も多い回答は「入居者間または管理側との人間関係」だ。やはり、騒音や共用部における使用方法など、主に生活習慣の違いからトラブルに発生することがあるという。そのため、事前に入居者間で最低限のルールを設けるなど、日頃の摩擦を少なくするといった対処がなされているようだが、転職理由にも人間関係という問題が多く挙がるように、シェアハウスにおいても居住者同士で円滑な人付き合いが行えるかどうかは重要であり、人間関係の悩みが生じる可能性があることは覚悟しておかねばならない。もっとも、入居者一人一人にプライベートな個室があるシェアハウスであれば、入居者同士と共用スペースで過ごすかどうかは本人次第となるため、人間関係におけるトラブルはかなり軽減できる。

シェアハウスの今後の可能性について
   近年、増加しているシェアハウス入居者の平均年齢は28.9歳と、主に若い世代が中心で40・50代や高齢者世代のシェアハウス入居者は少ない。そもそも40・50代や高齢者をターゲットとしたシェアハウスの供給数が少ないという現実がある。また、人気の火付け役であるシェアハウスを舞台にしたテレビドラマやドキュメント番組は、主に若い世代の恋愛模様を描いているものが中心であったという側面もあろう。

今後、単身世帯の総数は2030年頃まで増加していくと推計されている(図表)。生涯未婚者の増加などにより、40・50代の単身世帯も増えていくだろうが、主役は高齢者である。高齢者単身世帯は2030年以降も増加し、2035年には単身世帯の41.3%は高齢者が占めることになる。加えて、医療技術や健康ブームを背景に平均寿命・健康寿命が延びることで、介護サービスを受ける必要がない元気な高齢者単身世帯が増加するだろう。

単身世帯数の推移

ここで、内閣府の高齢社会対策に関する調査を見てみると、高齢者の単身世帯は二人以上世帯に比べ「毎日会話する」という回答割合が少なく、「日常生活に生きがい(喜びや楽しみ)を感じている」と回答する割合も少ない。昨今、情報テクノロジーが急速に発達し、気軽にコミュニケーションがとれるようになったとはいえ、直接、顔と顔とを合わせたコミュニケーションから得られる安心感や幸福感を完全にはカバーできないということだろう。前述したように、シェアハウスの魅力は他の人と暮らすことによる楽しさや安心感が得られるというメリットがある。こうした背景を鑑みると、若い世代だけでなく40・50代や高齢者の趣味や趣向を取り入れた「コンセプト型シェアハウス」が供給されれば、単身で住む40・50代や高齢者にもシェアハウスが広がる可能性は十分にある。

また、シェアハウスを育てる意義は別の視点からもある。日本は少子高齢化・人口減少社会に直面しており、医療介護などの行政サービスも限られた財源の中で効率的に行わなければならない。特に市街地が分散した地方都市において、居住地区の集積を伴うコンパクトなまちづくり(コンパクトシティ)が必要になる。富山市などでは先駆けて取り組みが進んでおり、居住を推進する地区に補助金を設けている。補助金政策も理にかなっているが、例えば今後増加するおひとりさまに対してはシェアハウスを提案し、集積するのも一案であろう。地域コミュニティの再構築やマンション、一軒家に比べ比較的賃料が安いことを考えると、シェアハウスが魅力ある居住先の一つとして選択される可能性は大いにある。拡散した市街地の集積促進策の一つとして、おひとりさまからシェアハウス、そしてコンパクトシティにシェアハウスという流れができないだろうか。確かに良好な人間関係作りというハードルはあるが、こうした点からもシェアハウスを育てていく意義があると考える。




 
 ひつじ不動産の「シェア住居市場 統計データ」によるもの。
 ボルダリングとはロープなどの特別な器具を使わないクライミングのこと。もともとは、フリークライミングの練習として始まったものだが、特別な器具を必要とせず、手軽にできることから支持を集め、今ではひとつのジャンルとなっている。
 日本シェアハウス・ゲストハウス連盟会員が運営するシェアハウスに概ね1ヶ月以上入居している入居者に対するアンケート調査結果(「シェアハウス市場調査2013年度版」)の中で、シェアハウスに実際に住んでみて満足している点として「他の人と暮らすことによる楽しさや安心感が得られた」、「外国人や経歴の異なる人々と交流できる」と回答した人が共に51.0%と最も多い回答だった。
 ひつじ不動産の「シェア住居市場 統計データ」によるもの。
 「シェアハウス市場調査2013年度版」によれば、入居を拒否する具体的な理由として52.9%が「高齢のため」と回答している。
 単身世帯は2010年の1,678万世帯から増加を続け、一般世帯総数が減少に転じる2020年以降も増加し、2030年以後ようやく減少に転じる。
 「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査(平成25年度)」、「高齢者の経済生活に関する意識調査(平成23年度)」より。
 地方都市における集積・効率化については『「人口1億人目標と地方経済-地方は千差万別ながらも集積・転換、独自性の共通課題も」(2014/6/26 矢嶋康次)』を参照。

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(2014年09月30日「研究員の眼」)

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