2014年04月07日

法人税率引き下げと世界の目線

経済研究部 チーフエコノミスト   矢嶋 康次

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安倍首相はダボス会議で法人税率の引き下げを発表し、国際公約とした。
   6月の成長戦略に織り込むべく議論がこれから加速しそうだが、法人税率引き下げは恒久的な措置、それに見合う財源を見つけ出す必要がある。法人実効税率を現行水準(34.6%)から10%程度の引き下げ、すなわちアジア諸国並みの25%に引き下げるためには、約4兆円の財源が必要で、消費税に置き換えると約1.6%分となる。
   これだけ大きな財源を使ってまで法人税率を引き下げなければならないのか、その議論を「世界の目線」という視点からもっと論じなければならない。

法人税率引き下げが実現しても、日本企業の海外展開スピードは緩やかになるかもしれないが止まりはしない。
   法人税率引き下げの狙いは、日本の中で活躍する企業を増やすことで雇用を確保し、経済を推進すること。すなわち、国内に企業を呼び込むこと。そのためには、世界の企業が日本で活躍したい、そんな環境にならなければならない。日本の対外直接投資は世界の中でも2番目。ところが、海外から日本への直接投資はOECD34カ国中で最下位である。

世界企業が日本に投資(進出)しない理由は法人税率の高さに限らず多岐に渡る。ビジネスコストの高さ、英語環境のなさ、法規制の難しさなどなど。こうした障壁の改善が進まない中、法人税だけ下げても、企業を呼び込めるという単純な話ではない。しかし、他の障壁の改善も進まない中、表面的な税率が不利な日本になぜ企業がくるのか。今はアベノミクスで世界の目が日本を向いている。その流れに乗って法人税率引き下げというハードルを実現し、「日本は変身する」というメッセージを示すことが、その第一歩となろう。

法人税率引き下げの財源確保に向けては、OECDで見られているような法人税パラドックスが日本でも成立するのかが重要なポイントとなる。
   法人税パラドックスとは、税率を下げても税収が安定または増える状態をいう。
   法人税パラドックスを否定するわけではないが、今の日本の財政状況を踏まえれば、パラドックスが起こるのだから代替財源を確保しなくていいという無責任な議論はありえない。何らかの財源を確保する必要がある。

その際、特定の業界に恩恵が偏りやすい法人税関係の租税特別措置(研究や投資などの一定の条件を満たした企業の法人税を軽くする仕組み)の見直し議論は最優先となる。法人税の税率を下げるのだから、課税ベースを拡大すべきというのは自然な流れだ。現存する措置について影響と効果を丁寧に検証していき、当初の目的を達成した租税特別措置については、廃止を視野に議論を進めるべきだ(ただし、これを全部なくした場合でも9000億円と、法人実効税率2%程度の財源しか捻出できない)。

さらに将来的な消費税の引き上げと法人税率の引き下げのセット案も議論されるべきだ。この議論をすると、すぐに「法人」対「個人」との対立議論に陥りがちだが、法人税率を下げることが国民にどういうメリットとデメリットがあるのか、その丁寧な説明が強く求められることになる。

法人税率の引き下げ・規制障壁の改善などの議論のポイントは、世界の中で躍進する日本、世界の中で魅力ある日本にするという世界目線で議論を深化させることができるかということである。そうしなければ縮小する日本を救うことはできない。みんなが世界目線となれば、結論も、決断のスピードもいままでと変わってくるのではないか。

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矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融、日本経済

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