コラム
2012年11月29日

GDP統計に現れない活動が増えている?~ボランティア・コンサートに参加して

  谷本 忠和

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今年2回目のボランティア・コンサートに参加した。縁あって入居した集合住宅は5年目に入るが、住民や管理組合によるこうしたイベントが増えている。

今回は「東北復興支援 音楽ボランティア・コンサート」。プロ活動しているリーダーを核に、主婦とサラリーマンで構成。活動の場である東北でも地元(関東)でも、生後2か月から3歳児を連れ、背負いながら演奏することもあるという。真心がいっぱい詰まった手作りコンサートだ。
   大ホールでのコンサートのような迫力や洗練さはないが、目の前で放つトランペット、フリューゲル、ピアノ、ビオラ、パーカッション、ヴァイオリン、フルート、ギターの生の音色はとてもきれいで、それらが奏でる懐かしいメロディと懸命に演奏する姿に、心が洗われ、癒される。
   感謝の拍手が静まると、リーダーから意外な言葉が返ってきた。2011年3月の東日本大震災後、「生の音楽の力で東北の方々にパワーを送りたいと思い、東北と地元でチャリティ・コンサートを本格的に始めたが、結局、私たちが皆さんの笑顔や生きる勇気から沢山の元気をもらっています。」と。聴かせてもらう側に届く心の豊かさと演奏する側がもらう豊かさがあるのだ。

このようなボランティア・コンサートをはじめ、様々なコンサートが全国で数えきれないくらい行われている。
   しかし、これらはGDP統計には現れない。一般のコンサートならS席は数千円也、これがGDP統計に入るのだ。
   この日本で、ボランティア・コンサートに限らず、GDP統計に現れない「ボランティア活動、NPO活動(特定非営利活動)、市民活動*1」は、いったいどのくらいあるのだろうか。

内閣府が実施している「社会生活基本調査(5年に1度)*2」の「ボランティア統計」によると、直近1年間で何らかのボランティアに参加した人数(行動者数)は、「ボランティア活動」として調査を開始した2001年が3,263万人、2006年は2,972万人、2011年は2,995万人であり、概ね「横ばい」で推移している。一方、NPO法人は、1998年にNPO法が施行されて以降、2001年末5,625法人、2006年末29,934法人、2011年末44,291法人と著しい成長を示している*3。勿論、これらの統計に入らない市民活動も沢山あるだろう。2004年12月公表の古い統計だが、日本のボランティアの金銭評価額は、約1.36兆円という試算が出ている。名目GDP比で0.27%相当だが、米国の同2.4%には遠く及ばない*4

日本経済は失われた20年と称され、この間、名目成長率は伸びず、勤労者の平均賃金は1997年度467万円(名目GDP523兆円)をピークに、2005年437万円(名目GDP504兆円)、2011年度409万円(名目GDP468兆円)と水準を切り下げている*5
   しかも、赤字国債(2012年度予算ベース38兆円)の大半(同26兆円)が社会保障経費に消える構造と残高1,000兆円に迫る日本の財政赤字は未だ解決の道筋が見えず、財政緊縮と増税の圧力は強い。

経済の長い停滞の中で、ボランティア活動やNPO活動などGDP統計に現れない社会的なサービスを提供する活動が広がりをみせていることは、成熟した日本にとって明るい材料といえる。
   東北を慰問され衆議院本会議場で演説されたブータン国王(ご夫妻)の来日から1年になるが、ご夫妻がNO1国として示された国民総幸福感=Gross National Happiness(精神面での豊かさ)*6が、「GDPに現れない活動」を通して、この日本でも静かに成長しているのではないかと期待している。


 

 *1 ボランティア活動・NPO活動は、保険・医療・福祉、まちづくり、学術・文化・芸術・スポーツ、高齢者・障害者・こども関係などが対象。(内閣府・第22回人口・社会統計部会資料より)

 *2 社会生活基本調査:直近は、2011年10月調査。

 *3 出所:社会福祉法人全国社会福祉協議会「ボランティア活動年報2011」

 *4 出所:内閣府経済社会総合研究所2004年12月「非営利サテライト勘定による寄付とボランティアの統計的把握」

 *5 出所:国税庁「2011年民間給与実態統計調査結果」

 *6 GNHの4つの柱:(1)環境保護 (2)文化の推進 (3)良き統治 (4)公正な経済発展

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