コラム
2012年11月12日

42キロのソーシャルキャピタル - 沿道の声援が聞こえる

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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10月21日(日)、初めての「ちばアクアラインマラソン」が開催された。42.195キロのコースのうち約4分の一に当たる10キロを海上のアクアラインを走るのだ。360度見渡す限りの海、爽快の一言に尽きる。しかし、フラットに見えるアクアラインも木更津から海ほたるの間で海面から約40メートルの高低差があり、ランナーにとってはかなりきついコースだ。海ほたるで折り返した後、前方に見えるおびただしい数のランナーが走る姿は実に圧巻だ。

アクアラインの走りを楽しんだ後、再び陸地側に戻ると無風で最高気温が26度、暑さがこたえる。後半も40メートルを超えるアップダウンがあり、多くのランナーが沿道に倒れ込む。私も30キロ過ぎからは走ったり歩いたりを繰り返し、給水所では頭から水を掛けながらなんとかゴール。今回は13,946人が出走し、6時間の制限時間以内に完走したランナーは10,296人、完走率は73.8%と市民マラソンとしては異例の低さだった。

普段、練習では42キロを走っていない私が、なんとかレースを完走できるのにはふたつの理由がある。ひとつは自分ひとりではなく多くのランナーと一緒に走っていること、もうひとつは沿道に声援を送ってくれる大勢の人がいることだ。今回の沿道の応援者は約31万人、コース周辺の保育所や幼稚園、小中学校、高校などの多くの子どもたちが力強い応援パフォーマンスを披露し、高齢者施設前では、車椅子に乗ったお年寄りが施設の職員の人たちと一緒に旗を振り、声援を送ってくれた。

沿道では家族や友人、職場の仲間を応援するプラカードが揺れ、給水・給食所では多くのボランティアが一所懸命ランナーを励ます。沿道の町内会ではレース当日のために歩道に花を植えたそうだ。このように市民マラソンは地域の人、ボランティア、企業や行政など多くの関係者の支援・協力と市民の理解があってはじめて実現する。ランニングはひとりでも、マラソンはひとりではできないのだ。

マラソンの道中は楽しいこと、辛いことなど様々だが、沿道には途切れることなく応援してくれる人たちがいる。市民マラソンはランナーとランナー、ランナーと沿道の人、沿道の人同士を、長いコースに沿ってつないでいく『42キロのソーシャルキャピタル』かもしれない。これから日本は人口減少時代を迎え、本格的な「おひとりさま」時代が訪れる。しかし、人はひとりで生きているのではない。長い人生には共に生きる人たちがいる。最近のお年寄りの孤立死やいじめによる子どもの自殺報道を聞くと、改めて『沿道の声援が聞こえる』社会を創っていかなければならないと思うのである。

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

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