2010年09月03日

インドのGDP(4-6月期)発表:景気は好調を維持したが一抹の不安も

経済研究部 上席研究員   三尾 幸吉郎

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インド中央統計機構(CSO)が8月31日に発表した今年4-6月期の実質国内総生産(GDP)は、前年同期比8.8%増となり前四半期の8.6%増から0.2%ポイント伸び率を高めた。
図表-1に示したとおり、世界的な金融危機の影響を受けて急減速したインド経済は、2009年1-3月期の前年同期比5.8%増をボトムとして回復に転じ、今年4-6月期には商業・ホテル・交通通信(対GDP比約27%)が前年同期比12.2%増と高成長を維持、農林漁業(対GDP比約15%)が同2.8%増と前四半期の0.7%増から伸びを高めたことが成長率を押し上げ、リーマンショック後では最も高い実質成長率となった。
他方、製造業(対GDP比約16%)は前年同期比12.4%増と、前四半期の同16.3%増からは伸びを低めた。また、図表-2に示した6月の鉱工業生産指数は前年同月比7.1%増(5月は同11.3%増)、7月の輸出は同13.2%増(6月は同30.4%増)と減速している。図表-3に示した景況調査でも、景況感指数(Business Optimism Index)の先行指標として注目される新規受注は若干低下しており、インド経済の先行きには一抹の不安が生じた。
一方、インフレ動向を見ると、図表-4に示した卸売物価指数は、7月に前年同月比9.97%と、依然として高水準ながらも半年振りに10%の大台を割り込んだ。図表-5に示した原油価格(WTI)や商品指数(CRB)と卸売物価指数(WPI)との関係を見ると、WPIはWTIやCRBの動きに数ヵ月程度遅れて連動する傾向があり、WTIやCRBが前月末の水準を維持すると、年末に向けてWPIの上昇にはブレーキがかかる可能性が高い。今後はラニーニャ現象が南半球の穀物生産に影響するリスクもあり注意は怠れないが、今年のモンスーン期の雨量は十分であったことから国内の食糧需給は改善すると見られるため、当面は物価上昇圧力が減退する方向となろう。
インド経済にこのような変化をもたらした要因は、先進国経済の減速と、物品税の減税幅縮小、現金準備率(預金準備率と同義)の累計で1%の引上げ、レポ金利(政策金利)の累計で1%の引上げ等の「出口戦略」の政策効果の2つと考えられる。インドの政策当局にとって、「出口戦略」が景気にマイナス寄与し、インフレに歯止めをかけることは想定内の動きであろう。しかし、先進国経済の減速による輸出の落ち込みは想定外で、先日インド政府が製造業の輸出を支援する税制優遇策を打ち出したのは、先進国経済の減速により「出口戦略」の政策効果が想定以上に早く進展し、景気の先行きに一抹の不安が浮上したためではないかと見ている。
したがって、当面の政策スタンスは、依然として燻るインフレを注意深く見極めつつも、先進国経済の減速の影響にも配慮して、景気と物価の両睨みの運営となる可能性が高く、次回9月16日に予定される金融政策決定会合では、現在の政策を維持し、更なる引き締めは見送ると見ている。

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経済研究部   上席研究員

三尾 幸吉郎 (みお こうきちろう)

研究・専門分野
中国経済

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